米株高、GAFAに続く2本柱 先進医療とIT変革
【ニューヨーク=宮本岳則】米国株が史上最高値圏で推移している。けん引しているのはアマゾン・ドット・コムなど巨大IT(情報技術)銘柄群「GAFA」ばかりではない。先端技術や強固なビジネスモデルで業績を伸ばす米企業は多い。成長企業に集中投資するファンドの保有株から浮かび上がる投資テーマは「先進医療」と「デジタル変革」だ。

8月下旬にハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数が初の8000台に乗せ、米S&P500種株価指数も過去最高値を更新した。好調な米景気を背景に、株式市場でも米国の一人勝ちが鮮明になっている。
特に成長期待の高い企業はどんな顔ぶれなのか。米S&P500種株価指数を構成する主要500社を対象に、グロース(成長)株に投資するファンドの保有比率が発行済み株式数の30%以上を占める銘柄を抽出した。そのうえで、過去3年間の株価上昇率が高い順位に並べた。ファンドの分類や保有状況は米調査会社ファクトセットのデータに基づいた。
浮かび上がったのは、先端医療の注目度の高さだ。過去3年の株価上昇率が6倍と首位になったバイオ医薬品会社ネクター・セラピューティクス。がん治療薬の開発で米製薬大手とライセンス契約を結び、成長期待が高まった。
医療が投資テーマになる底流には、先進国を中心に進む高齢化がある。先進医療で競争力を高められれば安定収益が見込める。機関投資家にとっても長期保有に適した投資先になりやすい。

3位のアビオメッドは急性心不全に対し心臓の働きを補助する「ハートポンプ」で世界最小製品を開発した。現在、売上高の9割を米国が占めるが、ドイツと日本を「最優先の市場」(マイケル・ミノーグ最高経営責任者)と位置づけ、世界展開に意欲をみせる。このほか、手術の支援ロボットを手がけるインテュイティブサージカルも株価上昇率は3倍を超える。
もう一つの柱はデジタル変革だ。米国のIT(情報技術)はGAFAにとどまらない層の厚さが強みで、世界中から投資マネーが集まる。米運用会社フランクリン・テンプルトン・インベストメンツでテクノロジー株ファンドを担当するジョナサン・カーティス氏は「人工知能(AI)やクラウドの力で業務を効率化したり、新たな事業機会を生んだりする『デジタル変革』が投資テーマ」と話す。
特にインターネット経由で数値計算やソフト利用、データ保管などを行う「クラウドサービス」の需要は大きく、関連企業は順調に業績を伸ばしている。画像処理ソフト「フォトショップ」で知られるアドビ・システムズは箱入りソフトから、定額課金モデルへの移行に成功。18年3~5月期は四半期として過去最高の売上高を達成した。
あらゆるモノがネットとつながる「IoT」もデジタル変革の重要テーマだ。通信やデータ処理に必要な半導体は需要拡大が見込まれる。半導体の設計を自動化するソフトは米企業による寡占化が進んでおり、IoT普及の恩恵は大きい。シェア首位のシノプシス、同業のケイデンス・デザイン・システムズはグロース株ファンドに多く組み入れられている。
グロース株がけん引する株高は、停滞の続いた米新規株式公開(IPO)市場にも好影響を及ぼしている。米調査会社ディールロジックによると2018年1~6月期のIPO件数は14年以来、4年ぶりの高水準に達した。
IPO市場でも医療やIT関連の好調ぶりが目立つ。株高が企業経営者の上場意欲を刺激し、新たな成長銘柄を米国市場に呼び込む。この好循環が止まらない限り、米国株の優位性は揺らがない。
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