【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマー国営紙は5日、イスラム系少数民族ロヒンギャと治安部隊との衝突に伴い多数の難民が隣国バングラデシュに逃れた問題で、「国外に逃れていた1家族6人が帰還した」と伝えた。同紙によると、6人は4日朝、政府が難民帰還に備えて設けた一時滞在施設に姿を現した。食料や生活物資を支給したうえで、親族に引き渡したという。
国営紙は帰還した6人の国籍や宗教に触れていないが、ミャンマー西部ラカイン州の当局者は6人がイスラム教徒だったと明らかにした。9月中旬にはじまる国連総会では、ロヒンギャ問題でミャンマーが非難を浴びるのは必至。今回の難民帰還には、帰還者を受け入れる姿勢を対外的に示す狙いがありそうだ。
2017年8月の衝突以降、バングラデシュに逃れた難民は約72万人。両国政府は同年11月に難民帰還に向けた覚書を交わしたものの、本格的な帰還は始まっていない。6人は独自に国境を越えたとみられる。
4月には、両国間の国境地帯に逃れていた別の難民家族5人も、自力で帰還した。
本格的な帰還開始を呼びかけるミャンマーに対し、国連などは「帰還難民の身の安全が保証されているとはいえない」として、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの無条件での活動再開を求めている。