スウェーデン、9日総選挙 極右政党に勢い
「スウェーデン人優先を」、難民危機が広げた不満

2018/9/5 20:30
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9日投開票のスウェーデン議会選で「反移民」を掲げる極右・スウェーデン民主党が"主役"となっている。約100年にわたって第1党の座を守ってきた与党・社会民主労働党を脅かし、選挙後の新政権づくりを左右する可能性も出てきた。移民・難民の受け入れに寛容な福祉国家のイメージが強い同国で何が起きているのか。現地で極右台頭の理由を探った。

雨の中、極右政党・スウェーデン民主党のオーケソン党首の演説には700人を超す聴衆が集まった(スウェーデン南部・カルマル、9月1日)

1日のスウェーデン南部のカルマル。極右・民主党のオーケソン党首(39)が街頭演説で「今のスウェーデンを変えられるのは民主党だけだ」と叫ぶと、大きな拍手がわき上がった。雨にもかかわらず、集まった聴衆は700人超に達した。

相次ぐ凶悪犯罪に、重病でも手術まで数カ月待ちの医療――。様々な問題を移民・難民に結びつけて不安をあおるのがオーケソン流だ。選挙公約では難民・移民の受け入れ凍結を約束。「まずスウェーデン市民を優先すべきだ」と「反移民」をたきつける。

演説に熱心にうなずいていたのが、造船企業に勤めるマグヌスさん(47)。「政府は財源が無限にあるかのように移民を受け入れ、スウェーデン人のための政策を後回ししてきた」と憤る。高福祉だが高負担でもある市民の不満は根深い。

民主党は8月以降の世論調査で、20%前後の支持率を確保。前回2014年の議会選の得票率(12.9%)から大きく票を伸ばす見通し。14年まで8年間、政権を担った第2党の中道右派・穏健党を上回り、支持率20%台半ばでトップの与党・社民党も脅かす。

15年の欧州難民危機では、スウェーデンに約16万3000人の難民申請者が押し寄せた。民主党は「1人あたり1日1万スウェーデンクローナ(約12万円)」が難民に費やされ、医療の待ち時間などの問題が置き去りにされてきたと批判。社民党の得意分野だった福祉問題も移民問題にすり替える。

「スウェーデン人は一年中、病気しないように注意しないといけないのに、移民・難民は手厚い支援を受けている」。ストックホルムで、民主党の選挙ボランティアをしていたエンジニアのロナルドさん(57)は急病で病院に行っても「8時間は待たされる」とこぼす。「真に支援が必要な分野を放置してきた社民党への失望が民主党を勢いづけている」と語る。

ネオナチの系譜を受け継ぐ民主党だが、ソフト路線への転換で支持を広げてきた。ただ本当に過激な排外主義から決別したのか疑問の声も多い。元ストックホルム市長で社民党のマッツ・ホルツ氏(72)は「移民を追い出し、欧州連合(EU)から離脱し、グローバリズムに反対する過激な極右勢力であることに変わりない」と警戒する。

8月下旬には、厳しい質問をぶつけてきた公共ラジオ放送局に、オーケソン党首が「左翼に支配されている」として「閉鎖」を主張。言論の自由の軽視だと物議を醸す一幕もあった。主要政党が一致して中枢政治からの極右を排除してきたスウェーデン政治が、転換期を迎えようとしている。

(ストックホルムで、森本学)

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