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大関とりの御嶽海、自覚胸にもっと稽古を

大相撲秋場所は9日、東京・両国国技館で初日を迎える。注目の一人は先場所初優勝して大関とりに挑む関脇御嶽海だろう。大関を狙える実力は十分あるが、看板力士を目指すにあたって注文もつけておきたい。

先場所の御嶽海は攻める相撲を取って、立ち合いで押し込めていた。相撲に力強さがあったし、動きもよかった。これまでスタミナ切れで失速することもあった中盤戦以降も崩れることなく、「きょうも御嶽海が勝つんじゃないか」という雰囲気があった。それだけ自信を持って相撲を取っていたのではないか。3横綱1大関が休場する上位不在の場所だったとはいえ、優勝をつかみ取るのは大変なこと。優勝のプレッシャーがかかるなか、関脇で13勝の好成績を収めたのは大きいことだし、本人も大きな自信を得たと思う。今場所にもつながっていくはずだ。

名古屋場所で初優勝を果たし、八角理事長(右)から賜杯を受け取る関脇御嶽海=共同

対戦相手からすれば、御嶽海は本当に嫌なタイプの力士だ。立ち合いも鋭いし、なおかつ攻めが速い。守りに入った力士を攻めることはたやすいが、御嶽海は休むことなく次から次へと攻めて圧力をかけてくるから、対戦相手が攻め返すことは難しい。また前傾姿勢を保っているから、体を起こそうと思ってもなかなか起こせない。相手はあれよあれよといううちに、気がつけば土俵際ということもあるだろう。当然、追い込まれれば焦って相撲も雑になってくる。

センスの塊、身体能力も高く

御嶽海は理にかなった動きをするし、立ち合いで当たってからの体の使い方や攻め方、前さばきや小技もうまい。前に出る相撲を心がけているから、足も自然と前に出ていく。「相撲センスの塊」といっていいだろう。体の反応を見てもわかるように、おまけに身体能力も高い。稽古でそう簡単に身につかない、生まれ持った素質を兼ね備えている。

5月の夏場所は小結で9勝、7月の名古屋場所は関脇で13勝。秋場所で11勝すれば、大関昇進の目安「三役直近3場所計33勝」に届く計算だ。今場所は先場所の休場から戻ってくるとみられる横綱・大関の上位陣相手に、どれだけ自分の相撲が通用するかがカギになるだろう。ただ、今の上位陣に対して負けないくらいの力を持っている。プレッシャーもあるだろうが、動じるタイプではないし、精神力も強いようにみえる。先場所の相撲をみれば、11番どころか12、13番くらい勝っても不思議ではない。大関とりのチャンスは十分ある。秋場所は角界の世代交代の第一歩となるかもしれない。

ただ、この際だから、気になっている点も指摘しておきたい。それは稽古に対する姿勢のことだ。いろいろと伝わってくる話では、御嶽海が日ごろ稽古をやっているとは聞かない。もちろん、稽古をしない力士に強い力士はいないと思う。学生時代に猛稽古したり、周りに見えないところでやったりしているのかもしれない。ただ、8月末の横綱審議委員会の稽古総見で御嶽海は横綱や大関に全く勝てず1勝13敗に終わり、八角理事長(元横綱北勝海)や横綱鶴竜から覇気が伝わってこないと苦言を呈されたそうだ。

8月31日の稽古総見で汗を流す御嶽海(右)と鶴竜=共同

自分が現役のころ、学生相撲出身のある関取に言われたことがある。「なんで稽古場でめいっぱい力を出すのか。相手に手の内を見せるだけじゃないか」と。言わんとすることは、稽古は適度にやって自分の相撲の確認をすればいい、ということのようだった。ただ、15歳で角界に入った自分からすれば、どんなことがあっても勝負に執着してしまう。必死に稽古を重ねてもっともっと力をつけて、とことんまで強くなりたいという一心だった。学生横綱などのタイトルを取って角界入りした御嶽海がどう考えているかは知らないが、学生相撲は短期間で結果を残さなくてはいけないから、大けがをしたら学生生活を棒に振るし、稽古のとらえ方の違いがあるのかもしれない。

下の者のお手本にならないと

考え方は人それぞれ。ただ、御嶽海は先日の番付発表記者会見で、「稽古せずに上に上がりたい」という趣旨の発言をしたと聞いた。俺は稽古しなくても強いんだという思いがあるのだろうが、そんなことを自慢げに語るのはいかがなものか。センスがない力士は、稽古でこれでもかと苦しい思いをして必死に体を大きくし、やっとのことではい上がる。ほとんどの力士は稽古で力をつけて強くなっていくのが現実だ。厳しい稽古を重ねて体を鍛え上げるからこそ、けがをしづらい体にもなり、長いこと相撲を取ることもできる。御嶽海の軽はずみな発言で「相撲ってそんなもんか」と思われたり、勘違いしてしまう力士が増えたりしては困る。稽古して損をすることは何一つない。稽古を否定するような発言をしてはいけない。

よく言われるように、上にいけばいくほど自覚を持って、下の者のお手本にならないといけない。優勝力士として、大関を狙う力士として、自覚を胸に稽古に励んでほしい。

(元大関魁皇)

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