2019年5月22日(水)

米、シリア化学兵器使用なら「再々攻撃」と圧力

2018/9/4 16:44
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【ワシントン=中村亮】トランプ米政権がシリアのアサド政権による化学兵器の使用に警戒を強めている。使用防止に向けてアサド政権を支援するロシアに働きかけを強めるが、目立った進展はみられない。トランプ米大統領は化学兵器使用を「レッドライン(越えてはならない一線)」と位置づけ、アサド政権に2回の軍事攻撃を実施した。化学兵器が再び使われれば中東情勢が一段と緊迫する公算が大きい。

トランプ氏は3日、反体制派の最後の拠点となっている北西部イドリブ県の情勢に関して「アサド大統領は無謀な攻撃をしてはならない」とツイッターで警告した。数十万人規模が避難民になるとの見方があり「そのようなことは起きてはならない」と訴えた。

米国務省は1日からジェフリー・シリア特別代表をイドリブ県に近接するトルコなどに派遣し、緊迫する情勢に対応してきた。

シリア内戦は2011年に始まり、アサド政権は当初、反体制派に対して劣勢だったが、15年にロシアの本格的な軍事支援を得て形勢の逆転に成功した。北部アレッポや、首都ダマスカス近郊の東グータ地区といった重要拠点を次々と奪還。米国はこの過程でアサド政権が塩素ガスなどの化学兵器を使ったとみる。

トランプ政権はさらなる化学兵器の使用を防ぐためにロシアとの協議を重視している。米ブルームバーグ通信によると、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が8月下旬にロシア政府高官と会談した際、アサド政権がイドリブ県で化学兵器を使った場合には大規模な軍事攻撃を用意していると伝えた。ポンペオ米国務長官もロシアのラブロフ外相との電話協議で将来的な化学兵器の使用に懸念を示した。

しかし、現時点でロシアの協力が得られたかは不明だ。ロシアは8日までの予定で地中海での軍事演習を実施しているもよう。過去のトランプ政権によるシリア攻撃では、東地中海に展開した米海軍の駆逐艦が巡航ミサイル「トマホーク」を発射していた。ロシアの軍事演習には今後の米国によるシリア攻撃をけん制するねらいがあるとみられる。

トランプ氏も3日、ロシアがアサド政権を支援していると指摘したうえで「人道的な悲劇に関与して重大な過ちを犯そうとしている」と批判した。化学兵器の使用には直接触れていないが、シリア情勢をめぐってロシアが米国に協力的でないことに不満を漏らした格好だ。

アサド政権が化学兵器を使えば、トランプ氏が3度目のシリア攻撃に踏み切る可能性がある。オバマ前政権は化学兵器の使用をレッドラインと明言しながらシリアでの軍事行動に踏み切らなかった。トランプ氏はオバマ氏の姿勢を弱腰だと批判してきたため、断固とした行動を政権交代の成果としてアピールできる。

さらなる軍事行動は、トランプ政権が過去に実施した攻撃が抑止力を持たなかったことをも意味する。今年4月には3つの化学兵器関連施設を集中攻撃したが、当時も化学兵器を根絶したという確証は得られていなかった。トランプ政権の親イスラエル寄りの政策などと相まって、中東情勢の混迷に拍車がかかりかねない情勢だ。

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