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今日も走ろう(鏑木毅)

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生まれる前とは生活一変 娘が教えてくれたこと

2018/9/6 6:30
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私には5歳になる娘がいる。結婚15年目、44歳の時に生まれた子だ。

私たち夫婦は子供のいない生活に長年、一抹の寂しさを感じながらも、むしろそのライフスタイルを楽しんできた。ところが娘が生まれて人生は大きく変わった。当初はその変化はもちろん、そもそも娘の存在を受け入れることさえ大変だった。

例えば大きな試合が近づきトレーニング量を増やしたい時期なのに、娘が体調を崩すと私も同じように体調が悪くなる。そのため思うようなトレーニングをできず、つい娘がいなかった頃と比べてしまい、妻に八つ当たりすることがあった。

トレーニングを兼ねて娘とヨーロッパアルプスの高峰へ

トレーニングを兼ねて娘とヨーロッパアルプスの高峰へ

幼い頃の娘は生来のおっとりした性格や早生まれということもあり、同学年の子供たちに比べてさまざまな点で違っていたように思う。集団で行動するよりも1人でじっくり何かすることの方が好きだった。やや自己中心的で少し吃音(きつおん)もあると指摘されると心配で仕方がなかった。

夫婦で娘の幸せを願う点では一致しているものの、育て方の理想では大きな違いがあった。田舎育ちの私は放任主義、都会育ちの妻はどちらかと言えば管理したいタイプ。2人だけの頃は夫婦の価値観は同じで、小さな違いこそあれ、基本的には大きく食い違うことはなかったため戸惑ったものだ。

夫婦で考えあぐねた末、娘に求める唯一のことは笑顔を絶やさぬことだと決めた。もともと生まれた時からいつもにこにこしている娘だが、何はともあれ娘が笑顔でいられるような選択をするのがベストだと考えた。将来、どのような道に進んでも周囲からこの人と一緒に仕事をしたいと思われるには朗らかな明るい人柄が大切だと感じていたためだ。

40歳で公務員を辞めトレイルランニングというマイナースポーツのプロ選手になり、スポーツの普及者としてもここ10年続けてこれたのも、周囲の人々の大きな協力があったおかげ。事をなすには決して1人ではできないし、周囲に気持ちよくかかわってもらうには大きな情熱も必要だが、何より大切なことは笑顔を絶やさぬこと、このシンプルなことが最も必要だと夫婦ともども痛感してきたのだった。

思えばこの5年間は娘に振り回されっぱなしだった。それでも子供は無条件にかわいいし、なによりも尊い存在だ。遠征などで娘に会えない日々は写真を見ては、あと何日で帰れるだろうかと指折り数えてしまう自分に気付く。娘を通して未知のことを楽しむことができるし、母としての妻のそれまで見たことのなかった一面を垣間見るのも新鮮な体験だ。子供ができてからの自分はそれまでとは全く異なる別の人生を歩んでいる気がする。

娘の誕生で我々夫婦の老後の青写真は大きく変わった。より不透明になったともいえるのかもしれないけれども今はその不安定な未来を楽しみたいと願っている。

(プロトレイルランナー)

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