2018年11月18日(日)

シリコンバレー去る新起業家たち(The Economist)

北米
The Economist
(3/3ページ)
2018/9/5 2:00
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例えば消費者向けネットサービスを手がける新興企業は、アルファベットやアップル、FBの陰で、資金調達に一層苦労するようになっている。米国でスタートアップが実施した1回目の資金調達ラウンド数は17年、12年に比べ約22%減った。アルファベットとFBがあまりに高額な報酬を社員に与えるため、新興企業は人材の獲得に苦労している(FBの給与の中央値は24万ドル=約2660万円だ)。

スタートアップが成功する見込みが低く、成功しても大手で安定した仕事に就くのと報酬が変わらないなら、人材は固定化してしまい、経済界全体のダイナミズムは失われる。これはシリコンバレーに限った話ではない。中国でも、アリババ集団や百度(バイドゥ)、騰訊控股(テンセント)による投資が国内のベンチャーキャピタル投資の半分近くを占めるという。こうして大手は、競合になりうる新興企業の行く末について、大きな発言権を握っている。

■政府の大学や研究開発への支出減少も一因

イノベーションを阻む第2の要因として、欧米の政府の政策が変化、後退しているという点もある。

反移民感情の高まりや、トランプ米大統領が導入したようなビザ制度の厳格化は、経済全体に影響を与えている。米国で創業する企業のうち、外国人起業家によるものは実に約25%を占める。そもそもシリコンバレーが繁栄できたのは、政府の寛大な政策によるところが大きい。

ところが、07~08年の金融危機以降、米欧各国政府による公立大学への支出額は減っているし、基礎研究への財政支援も不足している。米連邦政府が支出する研究開発費は、15年に国内総生産(GDP)比0.6%だったが、これは1964年の3分の1という低さだ。しかも、さらに減少する傾向にある。

シリコンバレーの地位が相対的に低下しても、活気あふれる他のITハブの世界的なネットワークが生まれるのならめでたいことだ。だが残念なことに、シリコンバレーがピークを迎えつつあるのは、場所に限らず、イノベーションそのものがますます難しくなっていることへの警告なのかもしれない。

(c)2018 The Economist Newspaper Limited. Sept. 1, 2018 all rights reserved.

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