2018年9月20日(木)

シリコンバレー去る新起業家たち(The Economist)

北米
The Economist
(2/3ページ)
2018/9/5 2:00
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 こうした変化には原因が多くあるが、最大の要因は単純にシリコンバレーはコストがかかる点だ。物価の高さは世界最高の水準だ。ある企業の創業者の見積もりによると、誕生したばかりのスタートアップがベイエリアで活動するには、米国内の他の都市に比べ、少なくとも4倍の費用がかかる。量子コンピューティングから分子生物学に至るまで、最近の新技術はネットサービス事業より利益率が低い。従って、こうした新興分野で事業を展開するスタートアップには、資金の節約はますます重要になっている。しかも、ベイエリアでの生活は、交通渋滞や麻薬問題、衝撃的なほどの格差など、不快な面も少なくない。

 その結果、他の都市の重要性が相対的に高まっている。起業活動について調査している米NPOのカウフマン財団によると、米国で最も起業が盛んなのは、現在はフロリダ州のマイアミ・フォートローダーデール地域だ。これは、面積に対するスタートアップや新しい起業家の数からランク付けしている。ティール氏の移住先は、IT業界が活況のロサンゼルスだ。今や自動運転車の中心地は、フェニックスとピッツバーグだとされる。メディア関連の起業ならニューヨーク、フィンテックならロンドン、ハードウエアなら深圳だ。どの都市も単独ではシリコンバレーに及ばないが、イノベーションが起きる場所が世界に分散しつつあることを示している。

■IT大手の高い給与水準が人材の流動化阻む

 新しい発想が、もっといろいろな場所から誕生するなら、それは望ましいことだ。実際、革新が生まれる条件が、他の地域でもよくなっていると考える理由は複数存在する。今や有望なアイデアさえあれば、どこにいても資金を手にできるし、IT投資家はカリフォルニア州だけでなく世界中で最新のアイデアを探し求めているからだ。新しい技術の発信地が一つの地域に限定されるべき理由は、もはやあまりない。スマホやビデオ通話、メッセージングアプリなど、シリコンバレーの企業が生み出したツールのおかげで、チームが各地のオフィスや街に分散していても十分に機能する。その結果、富はより公平に分配され、発想も多様化するかもしれない。

 シリコンバレーは幅広い分野を得意とするが、オタクの白人男性の文化一色に染まるリスクがある。昨年、投資家が拠出した資金のうち、女性が起業した企業への投資はわずか2%だった。

 問題は、革新が様々な地域で起きる可能性が高まる一方で、それを阻む要因も浮上していることだ。

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