2018年9月26日(水)

シリコンバレー去る新起業家たち(The Economist)

北米
The Economist
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2018/9/5 2:00
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The Economist

 「まるでルネサンス期のフィレンツェのようだ」――。

シリコンバレーでの暮らしは、こう表現されることが多い。米国におけるIT(情報技術)の“首都”として、世界の経済や株式市場、文化にとてつもなく大きな影響力を持つからだ。

シリコンバレーから起業家が流出する背景には、IT大手の寡占化やコスト高がある(写真はアップルの新本社=ロイター)

シリコンバレーから起業家が流出する背景には、IT大手の寡占化やコスト高がある(写真はアップルの新本社=ロイター)

 サンノゼからサンフランシスコまでのさほど広くない土地に、世界で最も時価総額の大きい5社のうち3社が本社を置く。アップルやフェイスブック(FB)、グーグル、ネットフリックスなどの大手だけでなく、エアービーアンドビーや、テスラ、ウーバーテクノロジーズといった新たな先駆者にとって、シリコンバレーは誕生の地であり、本拠地だ。サンフランシスコ湾を囲むベイエリアは世界19位の経済規模を誇り、スイスやサウジアラビアを上回る。

 シリコンバレーは、単なる場所ではない。一つの概念でもある。80年近く前に、ビル・ヒューレットとデービッド・パッカードがガレージで事業を立ち上げてからというもの、イノベーションや創造性の代名詞であり続けている。シリコンチップやパソコン、ソフトウエア、インターネットサービスなどにおいて、シュンペーター的な創造と破壊が繰り返される中、常にその中心であり続けてきた。

 中にはネットに接続するティーポットや、コインランドリーで使えるコインを販売するアプリなど、ばかげた発明もあった。一方で、世界を制覇したものもあった。マイクロプロセッサーチップやデータベース、スマートフォン(スマホ)は、どれもシリコンバレーで誕生した。

 エンジニアリングの専門技術、活気あふれるビジネスネットワーク、潤沢な資金、優秀な大学、そしてリスクをいとわない文化に恵まれたことで、シリコンバレーは他にまねすることのできない存在となった。模倣しようとする試みは何度もあったが、世界最高の革新のハブとしての地位を脅かす見込みのある都市はない。それでも、シリコンバレーの影響力がピークを迎えつつあるという兆候はある。それが、他の都市でもっと優れたイノベーションが生まれつつあることを意味するなら喜ぶべきだが、現実はそんなにうれしい話ではない。

■昨年、転出者が転入者を上回った

 まず、何らかの変化が起きていると示す証拠がみられる。昨年、サンフランシスコ郡から転出した米国人は、転入者を上回った。最近の調査では、数年以内にベイエリアを去る予定だと回答した者は46%に上った。これは、2016年時点の34%を上回る。新天地へ移るスタートアップは後を絶たず、オフショアリングならぬ「オフ・シリコンバレーイング」という言葉が生まれたほどだ。

 シリコンバレーで恐らく最も著名な投資家、ピーター・ティール氏も転出組の一人だ。一方で、残留組は広く目を配るようになっている。13年にシリコンバレーの投資家がベイエリア外のスタートアップに投じた資金は全体の約半分だったが、今は3分の2に迫る勢いだ。

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