2018年9月22日(土)

アルゼンチン、苦渋の輸出課税 通貨安で看板政策撤回

中南米
2018/9/4 16:03
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 【キト(エクアドル)=外山尚之】アルゼンチンのマクリ大統領は3日、通貨ペソの下落を食い止めるため、2019年に基礎的財政収支を黒字にする緊急財政再建策を発表した。柱は輸出品への課税。15年12月に誕生したマクリ政権は輸出振興を経済の柱とし、前政権が導入した輸出税の撤廃を進めてきた。看板政策の撤回という苦渋の決断だがペソ安は止まらず、苦しい状況が続く。

マクリ氏は就任以来、一貫して貿易の重要性を主張していた(1月、スイスのダボス会議で)=ロイター

 「非常に悪い税金であり、我々がめざす方向に反することを理解しているが、あなた方の貢献が必要だ」。マクリ氏は3日、25分にわたるテレビ演説で財政再建策を説明した。身ぶりを交え情熱的に語ったマクリ氏だが、輸出品への課税に言及する際は両手を組み、沈痛な表情を見せた。

 今回発表した輸出品への課税は20年末までの時限措置で、1次産品の輸出に対し、1ドルにつき現在のレートで10%にあたる4ペソ、その他の品目は1ドルにつき3ペソの税金を徴収する。年間2800億ペソ(約8170億円)の税収増につながり、国内総生産(GDP)の1.5%に相当する。

 18年にGDP比で2.6%の赤字となる基礎的財政収支を1年で均衡させるには必要な措置だが、規制のない開かれた貿易の重要性を主張してきたマクリ氏にとっては自らの政策の否定にほかならない。

 マクリ氏は就任直後、トウモロコシや食肉などにかかる輸出税の撤廃を発表。大豆に関しても段階的に引き下げるとして、輸出振興を掲げた。12年間続いた左派政権は農畜産物の輸出に対する税率を年々引き上げ、財政赤字の穴埋めに使っていた。輸出税の見直しは「アルゼンチンの輸出競争力を取り戻して世界の市場に売り込み、良質な雇用を生み出す」というマクリ政権を象徴する政策となっていた。

 もっとも、こうした政策がマクリ氏のねらい通りの効果を生んでいたとは言い難い。17年の輸出額は584億ドル(約6兆4900億円)と、過去2年間での伸び率は3%にすぎない。最大の輸出先であるブラジルの景気低迷などが響き、伸び悩んだ。一方で輸入規制の緩和などで17年の輸入は669億ドルと、同期間で11%増えた。通貨下落の遠因である巨額の経常赤字を生むきっかけとなった。

 マクリ政権は財政赤字と経常赤字の「双子の赤字」のうち、財政赤字を優先して対処することで財政の信頼を取り戻す考えだ。だが輸出課税の開始で輸出が落ち込めば、経常赤字は縮小せず、ペソの下落圧力が強まるおそれもある。

 マクリ氏の財政再建策発表後もペソは売られ、3日の為替市場では先週末比2.5%安の1ドル=37.75ペソで取引を終えた。年初来からの下落率は50%を超える。中央銀行が為替介入で支えている状況が続いており、反転の兆しは見えない。

 4日にはドゥホブネ財務相がワシントンで国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事と会談する。今回発表した財政再建案をもとに早期の追加融資を改めて求めるが、ペソ下落の歯止めになるかは不透明だ。

 マクリ政権は財政支出も大幅に削減するとしており、省庁の数を半減するほか、インフラ投資などを抜本的に見直す。しかし、こうした政策は目先の景気下押しにつながる。18年の経済成長率はマイナス2.4%と、従来見通し(マイナス1%)より悪化する。国内からの反発も避けられず、マクリ氏を取り巻く環境は日を追うごとに厳しさを増している。

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