2018年9月24日(月)

自動運転タクシー 乗ってみた
乗り心地に課題も安全実感

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2018/9/4 7:26
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

 タクシー大手の日の丸交通(東京・文京)と自動運転技術のZMP(同)が組み、都内で自動運転タクシーの実証実験を始めた。一般客が料金を払って自動運転タクシーに乗るのは世界で初めての試み。本当に安全なのか。人が介在しないで目的地までたどり着けるのか。記者が試乗した。

 8月28日、六本木ヒルズ(東京・港)。スマートフォン(スマホ)アプリで予約した自動運転タクシーが指定時刻にやって来た。自動運転とは言え、運転手の金子博昭さんとエンジニアが緊急時に備えて同乗している。

 車体のQRコードにスマホのカメラをかざすとドアが開錠。システム動作に15分ほどかかって出発した。通常は乗るとすぐ出発できるという。

 実は自動運転車に乗るのは初めて。本当にぶつからないのか、緊張しながら運転を見守った。目的地の大手町フィナンシャルシティグランキューブ(東京・千代田)まで5.3キロメートル。六本木ヒルズを出ると交通量が多い六本木通りに合流する。

 いきなり自動運転システムが試される。右折レーンで右折を試みるも、左側から近づいてきた車を感知し、急ブレーキ。後続車がクラクションを鳴らした。金子さんが慌ててアクセルを踏み、強制的に右折した。

 タクシーは複数のカメラやセンサーで周囲の車の速度や距離を測りながらハンドルやブレーキを制御する。車間距離が近すぎたり前方車が割り込むと、自動ブレーキがかかる仕組みだ。安全のため必要な仕組みだが、過敏すぎると周囲の車の流れを妨げる気がした。

 その後はスムーズに進む。直線道路や周囲の車が一定速度で走っている道は得意そうだ。そう思っていると突然、左車線の車が車線変更。タクシーは少し減速した。信号での停車、発進は難なくこなすが、ブレーキのたびに車が前後に大きく揺れるのが気になった。

 金子さんも「人と違って、急ブレーキが多くなってしまう」と話す。ベテランドライバーなら微妙なブレーキ操作で衝撃を和らげる。自動運転車はまだその加減が苦手。ZMPの西村明浩取締役は「快適な走行のため改善が必要」と話す。

 霞が関の交差点に向かう緩やかなカーブにさしかかる。左車線に入ろうと車線変更する際、急ハンドルで車体が左右に大きく揺れた。曲がりながらの車線変更は難しいのだろうか。

 車内にはセンサーが検知した周囲の車や横断歩道を歩く人をリアルタイムで示したモニターが映し出され、それを見ると少し安心した。

 国会前の交差点の大きな右カーブにさしかかった。ここはスムーズに通過。人の運転と変わらない。次は祝田橋交差点を左折。交通量が多く心配だったが、やや大回りに曲がった。人と比べて左折時に少し膨らむようだ。

 内堀通りでは右折のために左から右に2回、1車線ずつ慎重に車線変更した。「法令に従って車線を変えて少し真っすぐ走ってから、再び車線を変える。法定速度もしっかり守っています」と金子さん。法令順守のシステムで、確かに安全性は高そうだ。

 車は東京駅前の行幸通りへ。左側車線には路上駐車も多い。三角コーンも車線に数個並んでいた。金子さんは「このくらいなら大丈夫だが、車線をすべて隠すように置かれていると、センサーが車線を正しく読み取れない」と言う。車線が消えている道もたまに見かけるが、自動運転車はそうした不備も前提に設計する必要がありそうだ。

 東京駅前を通り、ゴールが近づいてきた。鎌倉橋交差点の左折時は横断歩道を渡る人の動きを見ながら、人が途切れた隙に発進。死角に人が居ないかセンサーで確認する。大手町フィナンシャルシティの駐車場に入り、約30分の試乗は終了した。車内のタブレットで精算し、車を降りた。

 初めはドキドキしたが、慣れると安心してドライブを楽しめた。センサーが人の目より緻密に周囲の車や人の動きを検知していることが実感できたからだ。乗車中に何かにぶつかりそうになったり危険な思いをしたりすることはなかった。

 ただ急ハンドルや急ブレーキが多く、挙動はぎこちない。金子さんは「免許取り立ての初心者より少しうまいくらい」と評価する。ベテランドライバーのような運転には時間がかかりそうだ。

 金子さんが乗車中にハンドルを操作したのは2回。後ろからクラクションを鳴らされた時と大手町で路上駐車を避けて運行した際だ。補佐役がいない完全自動運転車なら、不安を感じただろう。

 実証実験は8月27日~9月8日、1日4往復で実施している。料金は片道1500円。

 自動運転について国は運転手が常に車を操作できる「レベル2」の運行を認めている。今回の実験もレベル2だが、技術的にはシステムが全運転動作を制御するレベル3に近い。30分の運転で、人が運転を操作したのは2回だけだった。

 運転手不足やライドシェアサービス解禁を見据え、日の丸交通とZMPは2020年までに一定条件下で完全に自動化するレベル4の実用化を目指す。日の丸交通の富田和孝社長は「世界で新しいモビリティサービスが生まれているが、タクシーやバスなど公共交通が存在感を示すことが大切」と意気込む。

 試乗したタクシーの乗り心地はまだ「若葉マーク」だったが、実験を重ねて経験を積めば、遠くない未来にベテランドライバー並みの運転技術を身に付けそうだと感じた。

(企業報道部 長尾里穂)

[日経産業新聞 9月4日付]

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