2018年9月22日(土)

AI兵器、実用化迫る 規制導入に米ロなど大国が反対

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2018/9/3 16:54
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 【ジュネーブ=細川倫太郎】人工知能(AI)が攻撃目標を探し殺傷する自律型のAI兵器の実用化が間近とされる。国連が8月下旬に開いた会合では永世中立国のオーストリアがAIに生死の判断を委ねるリスクに懸念を示し、常設軍を持たないコスタリカなどの代表はAI兵器の全面禁止を主張。一方、軍事力が強大な米国やロシアはAIで人的損害を減らせるとして規制導入に原則反対する姿勢を強調した。

ドローン(小型無人機)が並ぶ兵器展示会(2017年10月、バーレーン)=ロイター

 会合はスイスのジュネーブで8月27日に始まり、1日未明に終了。100カ国以上の政府や非政府組織(NGO)の代表、専門家らが出席した。

 AI兵器は「自律型致死兵器システム(LAWS)」とも呼ばれ、人間が介在せず、自動的に目標を特定し攻撃する。現状でも自動飛行するドローン(小型無人機)などは実戦で使われているが、攻撃などの判断には人間が関与していた。

 最大の課題は倫理だ。「AIに人の生死の判断を委ねることはできない」とオーストリアのハイノツィ大使は主張した。AIのミスで市民が巻き添えになったり不具合で制御不能になったりするリスクは避けられない。

 コスタリカなどはAI兵器の全面禁止を主張。「現行の国際法は新兵器に対応できない」との声も聞かれた。参加したNGOによると、オーストリアやブラジルなど26カ国・地域が禁止条約の制定などに賛成した。

 一方、米国やロシアなどは原則として規制に反対する。米は「AI兵器は一般市民の殺傷を減らすことができる」と主張。ロシアも「AIのほうが人間より優れた判断が可能」と指摘した。仮に一部の国の主導でAI兵器禁止条約を制定しても、こうした大国が批准しなければ実効性はない。

 AI兵器の開発は加速している。韓国は相手の熱などで目標を決め、人間の指示に基づき機関銃などで攻撃するロボットを配備。米陸軍は8月24日、AIなどを使った次世代兵器の研究開発を担う「未来司令部」をテキサス州に設けた。

 人間の判断が全く介在しない「自律型」のAI兵器を現場に配備した例はまだないとみられるが、核兵器や対人地雷のようにAI兵器の開発や使用にも網をかけるルールづくりを求める声もある。ギル議長(インド)は「各国ともに何らかの人間の介在は必要という共通認識はある」と話す。

 AIは標的を撃つかどうかの判断だけでなく、敵の発見や特定、追跡、目標設定などでも活用されそうだ。欧州連合(EU)は「自律型兵器の中身や、人間の関与についてもっと議論を深める必要がある」と指摘する。

 「AI兵器の開発や製造、取引、使用には関与しない」。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)ら2400人以上の経営者や研究者などは、AI兵器に反対する声明に最近、署名した。こうした懸念をよそに次世代産業の浮沈を握るAIの研究で後れをとりたくないという思惑もあり、規制の議論は平行線をたどっている。

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