2018年11月21日(水)

次官キャップ(大機小機)

大機小機
2018/9/3 16:30
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安倍晋三政権になってから、政府系機関のトップや顧問・参与などのポストに民間人が就く傾向が強まっている。職務に求められる資格要件のいかんにかかわらず、かつてこうしたポストが天下り官僚の指定席だったことを考えれば、大きな前進である。わが国の抱える課題解決に向け、就任した方々には経験・知識・経営力などをふんだんに発揮していただきたい。

優秀な人材の獲得には相応の報酬が必要であることは、労働市場の常識だ。わが国の上場企業の役員報酬はこのところ徐々に高額化しており、今後はこの傾向が一段と進むとみられている。外資系企業がこうした人材に提示する報酬の水準はさらに高い。

ところが、政府系機関に就く場合には、この常識が通用しないらしい。

こうした人材を獲得するにあたって、安倍政権が支払う報酬には「次官キャップ」という制度がある。「政府系機関の役職員の年間報酬は、事務次官の年間報酬以下でなくてはならない」というルールである。事務次官の年収は約2300万円であるから、それ以下ということになる。

つまり、民間市場なら億単位を稼ぐ人材に「お国のために」その数十分の1の報酬で働いてほしいという制度だ。すでに財をなし、国益意識の高い人ならともかく、これでは働き盛りの人材は集まらない。

かつて、明治政府はわが国の近代化や重要な課題の解決のため、高額の報酬を支払って「お雇い外国人」を採用し、民間からも人材を募った。安倍政権も同様に民間人材の活用に踏み出したが、「次官キャップ」というあまりに非合理で市場原理からかけ離れた制度は、優秀な人材を天下り役人同様に扱うに等しい。

政権自らが「課題先進国」と表現するほど問題が山積しているのが、わが国の現状である。知識や経験の豊富な経営者や、世界に通じる才能・意欲を持つ若手人材が、「日本の将来のために意欲を持って働ける環境」をつくりあげる必要があるのは明白だ。

「次官キャップ」にこだわり、最もふさわしい壮年・青年層の民間人材の獲得が進まないような事態は、早急に是正する必要がある。これこそが「課題先進国」の政府が真っ先に対応すべき課題そのものではないか。

(万年青)

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