安倍晋三首相は3日、防衛省での自衛隊高級幹部会同で「新たな防衛力の完成を10年や15年かけて実現するようなスピード感からは完全に脱却しなければならない。今までの常識はもはや通用しない」と訓示した。政府が年内に見直す防衛大綱はおおむね10年程度の防衛力整備の指針だが、安全保障環境の変化に応じて柔軟に改める必要性に言及した。
防衛大綱について「我が国の安全保障の将来を決定づける極めて重要なものとなる」と指摘。「宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域を横断的に活用した防衛体制への戦略は待ったなしだ」と語った。自衛隊幹部らに「これまでの延長線上ではなく、大局観ある大胆な発想で考え抜いてほしい」と指示した。
首相は「全ての自衛隊員が強い誇りをもって任務を全うできる環境を整える。その責任をしっかり果たす決意だ」とも訴えた。憲法9条への自衛隊明記に改めて意欲を示したものだ。
政府は8月29日、有識者らで構成する「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・三村明夫日本商工会議所会頭)の初会合を首相官邸で開き、防衛大綱見直しの議論を始めた。