2018年9月20日(木)

クラウドから「エッジ」に動くITの巨人

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ネット・IT
コラム(テクノロジー)
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2018/9/3 2:00
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 未公開市場では、デルとインテルが、産業用IoTにエッジコンピューティングサービスを提供する米Foghorn(フォグホーン)に出資。デルは同様のサービスを手がける英IOTech(IOテック)のシードラウンドにも参加している。

 シスコやデル、マイクロソフトなど前述した企業の多くは、オープンフォグコンソーシアムも共同設立し、エッジコンピューティングのアプリケーションの標準化を目指している。

 センサーの価格やコンピューティング費用が下がり続けているため、ネットにつながる「モノ」は増えるだろう。

 こうした機器が増え、クラウドでは非効率的な場合もあることが認識されれば、エッジコンピューティングは多くの産業で使われるようになるだろう。

 その兆しはすでに様々な分野にある。

 マイクロソフトのケビン・スコット最高技術責任者(CTO)は「クラウドの機能をエッジで担えるようになれば、ネット接続が限定的か全くないエリアでもリアルタイムでの対応が可能になる。まだ初期の段階にすぎないが、こうした新たな機能は世界各地で重要な問題の解決策として使われ始めている」と指摘する。

 では、具体的にどんな分野でエッジコンピューティングが活躍しそうか。最後に、以下に列挙しておこう。

■輸送

 エッジコンピューティング技術の最も有力な用途の一つは輸送、特に自動運転車だろう。

 自動運転車にはカメラやレーダーからライダーに至るまでありとあらゆる種類のセンサーが搭載され、走行を支えている。

 前述したように、自動運転車はクルマの近くでデータを処理するエッジコンピューティングを使い、貴重なミリ秒を短縮する。自動運転車はまだ主流ではないが、各社は開発を進めている。

 エッジ処理の利用推進団体「オートモーティブ・エッジコンピューティング・コンソーシアム(AECC)」は今年、コネクテッドカー事業に乗り出す方針を明らかにした。

 AECCの村田賢一プレジデント兼チェアマンは「コネクテッドカーは高級車だけでなく量産モデルにも急速に広がりつつある。クルマで生まれたデータが既存のクラウド、コンピューティング、通信インフラのリソースを上回る転換点に近く達するだろう」と指摘する。

 AECCにはデンソートヨタ自動車、AT&T、スウェーデンのエリクソン、インテルなどが参加している。

 もっとも、大量のデータをつくり出し、リアルタイムでの処理が必要になるのは自動運転車だけではない。自動運転かどうかにかかわらず、飛行機や列車などの輸送形態にも同じことがいえる。

 例えば、カナダの航空機メーカー、ボンバルディアの小型機「Cシリーズ」は、エンジン性能の問題をすぐに検知するために大量のセンサーを搭載している。12時間の飛行で生まれるデータは844テラバイトに上るが、エッジコンピューティングによりこのデータをリアルタイムで処理できる。

■医療

 活動量計や血糖モニター、スマートウオッチなどの健康管理用ウエアラブル端末の装着感は改善しつつある。

 だが、収集された大量のデータのメリットを本当に生かすには、リアルタイムでの分析が必要だ。

 健康管理用ウエアラブルには、クラウドに接続しなくても脈拍や睡眠パターンを分析できるものもある。医師はその場ですぐに患者を診断し、データに応じて健康に関するアドバイスを提供できる。

 医療分野でのエッジコンピューティングの可能性は、ウエアラブル端末だけにとどまらない。

 離れた場所にいる患者のモニタリングや入院患者のケア、病院やクリニック向けの健康管理でデータを素早く処理できるメリットは大きい。

■製造業

 「スマート・マニュファクチャリング」では、最先端の工場で導入されている膨大な数のセンサーから様々な分析結果が得られる。

 エッジコンピューティングによる低遅延のおかげで、ほぼリアルタイムでの分析が可能になる。例えば、機械が過熱する前に運転を停止するのはその一例だ。

 工場のロボットがデータを処理できるようになれば、ロボットはさらに自立し、機敏に働けるようになる。機械学習を活用するケースも増えるだろう。

■農業

 エッジコンピューティングは農業にぴったりだ。農場はネット通信には不向きな遠く離れた場所にあることが多い。

 今のところ、ネット接続を改善してスマート農場を実現するには高価な光回線を敷設するか、場所によっては専用の衛星を持つしかない。

 だがエッジコンピューティングの技術があれば話は別だ。気温や機器の性能を監視し、散水など様々な機会の動きのプロセスを自動で減速したり、停止したりできるようになる。

■エネルギー

 エッジコンピューティングはエネルギー業界全般、特に石油・ガス会社による安全性の監視に役立つ。

 例えば、気圧や湿度のセンサーは大抵離れた場所にあるため、注意深く監視し、接続が遮断しないようにしなくてはならない。石油輸送管の過熱などの異常を見過ごせば、悲惨な爆発事故につながりかねない。

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