2018年9月19日(水)

クラウドから「エッジ」に動くITの巨人

CBインサイツ
ネット・IT
コラム(テクノロジー)
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2018/9/3 2:00
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 エッジコンピューティングはネットワークの「端」やその近くで実行される処理だけを指すが、フォグコンピューティングはエッジ端末とクラウドとのネットワーク接続を意味する。

 言い換えれば、フォグコンピューティングはクラウドで実行していた処理をネットワークのエッジ寄りでも可能にすることを指す。このため、フォグコンピューティングの推進団体オープンフォグコンソーシアムは「フォグコンピューティングではエッジコンピューティングが常に使われているが、その逆はない」と説明する。

 データ処理にはエッジ端末を使うが、常に瞬時の判断が必要なわけではない。つまり、エッジコンピューティングはクラウドを補完し、フォグコンピューティングと密接に連動するが、両方に取って代わるわけではない。この点を踏まえておくことは重要だ。

■エッジコンピューティングの進化

 エッジコンピューティングの進化によってクラウドの負担が軽くなれば、これが単一障害点(SPOF)になる可能性も軽減できる。

 例えば、ある企業がデータをクラウドに保存している場合、そのクラウドがダウンすれば、問題が解決されるまでデータにアクセスできず、重大なビジネス機会を失う恐れがある。

 実際、こういった事態はすでに発生している。16年に米セールスフォース・ドットコムの「NA14」サイトが稼働しなくなり、24時間以上にわたってネットに接続できなくなったことがある。契約企業は電話番号やメールアドレスといった顧客データにアクセスできず、業務は大混乱に陥った。

 脱クラウド依存を進めるということは、一定の機器をネットにつながなくても確実に動かせるようにするという意味だ。これは特殊な地形や油田があるへき地など、ネット接続が限られるか全くない場所で特に有用だ。

 エッジコンピューティングのもう一つの利点は、セキュリティーとコンプライアンスに関する点だ。企業による個人データの取り扱いに懸念を強めている各国政府にとって特に重要といえる。

 欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)が最近施行されたのもこれが理由だ。この規則では、個人を識別できる情報をデータの悪用から守ることを目指している。

 エッジ端末はローカルでデータを収集・処理するので、クラウドにデータを転送せずに済む。デリケートな情報をネットに流す必要がなくなるため、クラウドがサイバー攻撃を受けても影響は格段に小さくなる。

 エッジコンピューティングは新しいコネクテッドデバイスと従来の「レガシー」デバイスとの相互運用性もある程度確保する。従来のシステムで使われている「通信プロトコル」を、最新のコネクテッドデバイスが理解できる言語に変換してくれるからだ。つまり、旧式の産業機器をスムーズかつ効率的に最新のIoTプラットフォームに接続できるようになる。

■エッジコンピューティングを巡る競争

 クラウドを支配しているアマゾンなどは、エッジコンピューティングでもリーダーとして台頭しつつある。

 アマゾンは17年に「AWSグリーングラス」を投入し、この分野にいち早く参入した。これはAWSのサービスをデバイス側で実行できるようにしたもので、データをデバイス側で処理する一方、管理や分析、長期の保存にはクラウドを使うことができる。

 マイクロソフトもこの分野に本腰を入れている。今後4年間でIoT分野に50億ドルを投じる計画には、エッジコンピューティングも盛り込まれている。

 同社は「エッジ端末でもクラウドのような分析が可能」で、オフラインでも使える「アジュールIoTエッジ」を発表。エッジでのAI(人工知能)適用にも力を入れるという。

 後続のグーグルは8月上旬、エッジでのコネクテッド機器の開発を支援するために、ハード機器用チップ「エッジTPU」とソフトウエアの「クラウドIoTエッジ」を発表した。同社は「クラウドIoTエッジを使えば、グーグル・クラウドの強力なデータ処理能力と機械学習をロボットアームや風力タービン、石油掘削装置など数十億台のエッジ端末に実装できるようになる」と強調している。さらに「センサーが収集したデータをリアルタイムで処理し、ネットにつながなくても結果を予測できる」とも言う。

 もっとも、エッジコンピューティング分野に関心を寄せているのは、この3社だけではない。

 エッジコンピューティングの普及を促すソフトウエアや技術の開発に取り組む企業が目立ち始めた。

 米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)はエッジコンピューティングに今後4年間で40億ドルを投じる。同社の「Edgelineコンバージド・エッジシステム」は、データセンターと同等のコンピューティング機能を必要としつつも、遠く離れた状況での作業が多い産業界の企業が対象だ。

 このシステム(上の写真はEL1000モデル)を使えば、石油リグや工場、銅山などの現場で、クラウドやデータセンターにデータを送らなくてもコネクテッド機器からの分析を得られる。

 急成長しつつあるこの分野の主要プレーヤーには、米Scale Computing(スケールコンピューティング)や米Vertiv(バーティブ)、中国の華為技術(ファーウェイ)、富士通、フィンランドのノキアなども名を連ねる。

 米エヌビディアは17年、エッジ端末向けAIコンピューティング基盤の「Jetson TX2」を発売した。これは「同TX1」の後継機で、最先端のAIをクラウドからエッジに拡張するという。

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)や米インテル、米デル、IBM、米シスコシステムズ、独SAP、米AT&Tなどの有力企業もエッジコンピューティングに相次いで資金を投じている。

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