2018年11月17日(土)

クラウドから「エッジ」に動くITの巨人

CBインサイツ
米巨大ITへの逆風
ネット・IT
コラム(テクノロジー)
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2018/9/3 2:00
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CBINSIGHTS

 あらゆるモノがネットにつながるIoT時代の到来は「超ビッグデータ社会」の到来とも言い換えられる。我々の生活は膨大なデータのやり取りと切り離せなくなるのだ。超データ社会で注目を集めるのが「エッジコンピューティング」の技術だ。膨大なデータをいちいちクラウドに集約していたのでは到底追いつない。世界のテックジャイアントたちは、そんな現実の到来に備え、「エッジ」に熱視線を送っている。

超高速データ処理は「ぜいたく品」にすぎない場合もあれば、生死を分けさえする場合もある。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

例えば、自動運転車は多くのセンサーを使ってデータを収集する「走る大型コンピューター」だが、安全に走るには周囲の状況に瞬時に対応しなくてはならない。処理速度が少しでも遅れれば、致命的な事態を招きかねない。

今のところネットにつながる機能を備えた「コネクテッドデバイス」のデータ処理の大半はクラウドで実行されているが、サーバーとのデータのやり取りには数秒かかることもある。

ところがエッジコンピューティングを使えば、自動運転車はより迅速なデータ処理が可能になる。「エッジ(端)」とは機器の内部またはごく近くでデータを処理することを言うからだ。

2020年には、平均的な人が1日に生み出すデータは11.5ギガバイト(GB)相当に上るとされる。ネットにつながるモノが大幅に増えることは大量のデータが生まれることを意味する。そうなればクラウドでは処理しきれなくなる可能性があるのだ。

そこで、エッジコンピューティングは自動運転車をはじめとする様々な用途で、クラウドの代替手段になると目されている。

この分野には米アマゾン・ドット・コム、米マイクロソフト、米グーグルなどIT(情報技術)大手が続々と参入しており、次の主戦場となりそうだ。クラウド分野ではアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)がなお優勢だが、新興のエッジコンピューティングではどこがリーダーとなるのか、まだまだ見通せない状況だ。

■刻々と変化するコンピューティングの状況

エッジコンピューティングについて理解する前に、その前身であるクラウドのおかげでIoTが世界中で増えつつある点に目を向けなくてはならない。今やウエアラブル端末から家電まで、ネットにつながる「スマート機器」は至る所にある。

19年には世界のIoT市場は1兆7000億ドルを突破するとみられる。13年の4860億ドルから3倍以上に増える計算だ。

このようなスマート機器を動かすプロセスはクラウドが主流だ。

企業は自社のハード機器ではなく「クラウド(雲)」と呼ばれる離れた場所にあるサーバーのネットワークで、データの保存や処理などをできるようになった。

例えば、アップルの「iCloud」を使って自分のスマホのデータをバックアップする場合、自分のアカウントにログインしてクラウドに接続すれば、パソコンなどから自分のスマホデータを引き出せる。その人の情報はもはやスマホやデスクトップの中にあるハードドライブの容量の制限を受けない。もちろん、これはクラウドの数ある用途の一つにすぎない。

現時点でクラウドの人気はまだまだ高まっており、アマゾンやグーグル、マイクロソフト、米IBMなどのIT大手はこぞってクラウドサービスを提供している。

プライベートクラウド管理サービスを手がける米ライトスケールが18年に実施した調査によると、このようなパブリック型クラウドのうち、首位はアマゾンのAWS、2位にはマイクロソフトの「アジュール」がつけている。

パブリック型クラウドでアプリケーションを運営する組織は増えている(出典:ライトスケール)

パブリック型クラウドでアプリケーションを運営する組織は増えている(出典:ライトスケール)

だが、中央集権型のクラウドはどんな用途にも最適というわけではない。エッジコンピューティングは従来のクラウド型インフラでは対応できなかった策を提供してくれるのだ。

■エッジコンピューティングへのシフト

数十億台の機器がネットにつながるような未来の「超データ社会」を想像してほしい。と言っても、現在と変わらないのは、より速く確実なデータ処理を実現できるかが競争を制するカギとなるということだ。

中央集権型のクラウドはここ数年、コストの低さと柔軟性を実証してきたが、IoTの到来で回線への負担が増している。

そうなると、あらゆるスマート機器をクラウドで動かす必要はない、という考えが妥当になるだろう。クラウドとのデータのやり取りをなるべく抑える必要性が出てくるからだ。そこで必要になるのがエッジコンピューティングだ。

CBインサイツのデータによると、世界のエッジコンピューティングの市場規模は22年には67億2000万ドルに達する。まだ発展途上とはいえ、クラウドが担う一部の分野ではエッジコンピューティングの方が有用となる可能性があるのだ。

エッジコンピューティングを使えばデータが生まれた地点(例えば、モーター、ポンプ、発電機、その他のセンサー)の近くで処理できるため、クラウドとやり取りする必要性が減る。

クラウドに送るデータ量が減れば、クラウドとIoT機器を行き来する際に生じる遅れもなくしやすくなる。

一方で、エッジコンピューティング技術を内蔵しているハード機器の責任は増す。こうした機器にはデータ収集用のセンサーに加え、データ処理用のCPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理半導体)が搭載されている。

エッジコンピューティングが普及し始めるのに伴い、エッジ端末に関連するもう一つのテクノロジーである「フォグ(霧)コンピューティング」について理解しておくことも重要だ。

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