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豊島逸夫の金のつぶやき

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「天体観測」に揺れる市場

2018/8/31 9:05
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ニューヨーク株価連騰の流れを断ったのは、やはり米中貿易摩擦問題であった。新興国通貨危機の第二波も市場のムードを冷やした。

まず、トランプ大統領が対中2000億ドルの追加関税をパブリック・コメント期間が終わる来週にも発動か、との外電観測記事が流れた。続いて、トランプ氏が外電インタビューで「その報道が全く間違っているわけではない」と否定せず。さらに、米国に対する公平な対応がなされないなら「世界貿易機関(WTO)から脱退するであろう」と断定的表現は避けつつ言及した。

NY市場は北米自由貿易協定(NAFTA)交渉の新展開を一応「一歩前進」と評価して株価も上昇を継続していた。しかし、同交渉がライトハイザー通商代表とナヴァロ国家通商会議議長主導で進展したことで、政権内の強硬派が勢いを得て、対中通商交渉に臨んでいる。しかも、北朝鮮核問題に対する中国の態度にトランプ大統領が公然と不満の意を表し、米中関係も微妙な状況に置かれている。それゆえ、市場の反応も神経質にならざるを得ない。

なお、2000億ドルの追加関税については、段階的実施案や、実施は遅らせる案も選択肢とされ、流動的だ。

そして、新興国通貨危機の「伝染」現象が顕在化した。

アルゼンチンペソが一日で16%近く急落。同国大統領が国際通貨基金(IMF)に500億ドルの支援を急ぐようにSOSを発信したことがキッカケとなった。同国の金融当局も緊急利上げ。政策金利水準を45%から一気に60%に引き上げた。通貨防衛のための利上げが、すでに危機的な国内経済をさらに圧迫。通貨安による輸入物価急騰によるインフレも悪化。通貨投機筋はペソ売り攻勢を強めるという負の連鎖を断ち切れない。

さらに暫時落ち着いたかに見られたトルコリラの下げも誘発。一日で5%ほど急落した。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げサイクルが続く限り、新興国通貨安は避けられない。FRBは「世界の中央銀行ではない」というものの、実質的には「世界の中央銀行」としての影響力を持つ。

新興国通貨の範囲には人民元も含まれる。FRBの利上げが人民元安の要因となり、トランプ大統領は、中国金融当局が人民元安誘導と非難する。ジャクソンホールでの中央銀行フォーラムでは、パウエルFRB議長講演が「ハト派寄り」と解釈され、トランプ大統領の「FRB利上げけん制発言」を無視できなかった、との見解も市場に流れた。当のパウエル議長は、金融政策運営を「天測航海」に例え、「星座頼りのナビゲート」と語った。中央銀行金融政策の難しさを、実務家出身の率直な感想として述べているようだ。

市場が知りたいのはFRBが、どの星座に注目しているか、ということだろう。米利上げ、新興国経済不安、通商摩擦問題が共振する大波に揺れ、マーケットの視界は不透明な状況が続く。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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