人形躍動 膨らむ想像 劇団クラルテ版「はてしない物語」(もっと関西)
カルチャー

2018/8/31 11:30
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大阪を拠点に活動する人形劇団クラルテが今年創立70周年を迎え、記念公演としてドイツの作家ミヒャエル・エンデによる名作ファンタジー小説「はてしない物語」を舞台化する。空想の世界を旅する長大な物語をCG(コンピューターグラフィックス)や特殊装置を使わないアナログの人形劇でいかに表現するのか。

「はてしない物語」の稽古をする人形劇団クラルテのメンバー(大阪市住之江区)

「はてしない物語」の稽古をする人形劇団クラルテのメンバー(大阪市住之江区)

「あんな冒険、ぼくにはできないよ」

「大丈夫、君ならできる」

8月中旬、「はてしない物語」の稽古をする大阪市住之江区の劇団アトリエを訪ねた。大きな瞳がどこか寂しげな主人公のバスチアンは高さ約80センチメートルの木彫りの人形。役者が人形の背骨にあたる胴串(どぐし)を持って操り、木をよじ登ったり飛び移ったりと、軽やかでダイナミックな動きを見せる。21~78歳の役者たちは他にも、緑色の肌の少年アトレーユや幸いの竜フッフール、岩喰い男などの人形を操り、空想の世界を生き生きと表現する。

「はてしない物語」は1979年にドイツで刊行された長大なファンタジー小説だ。日本語版は82年に刊行され、単行本で600ページ近くに及ぶ。85年には「ネバーエンディング・ストーリー」のタイトルで映画化されており、こちらで物語を知る人も多いだろう。

物語全体を上演

映画版は前半のみだったが、今回の人形劇は物語の全体を上演することにこだわった。演出家の東口次登は「前半だけでも物語として成立はするが、後半に込められたエンデのメッセージをきちんと伝えたい」と話す。大筋に影響しないよう場面を省略するなどして前後半を約2時間の舞台にまとめる予定だ。

読書と空想が好きな少年バスチアンは「はてしない物語」という題名の不思議な本を手にする。本の中では、ファンタージエン国が虚無によって滅亡の危機に瀕(ひん)し、女王・幼ごころの君の命を受けたアトレーユが世界を救うための旅に出る。読み進むうちに、自分こそが救い主だと知ったバスチアンが本の世界に飛び込むまでが前半。

後半では、ファンタージエンの救い主としてほしいままに振る舞うバスチアンが次第に現実世界の記憶を失い、帰るすべも分からなくなる。バスチアンがどうやって現実世界に戻るかがクライマックスだ。

■「かわいくない」

クラルテの人形は「かわいくないのが特徴」と東口。粗く彫った木彫りの人形は見る側の想像をかき立てる狙いで、角度によって表情が変わって見える。基本的には1体の人形を1人の役者が操るため、3人遣いの文楽のような繊細な動きは表現しにくいが、素早く移動するような躍動感のある動きは得意だ。「観客にどう想像してもらうかが勝負」(東口)という。

クラルテは周年記念のたびに、劇団員が総出演するような大がかりな作品を作っている。25周年で手掛けた近松門左衛門原作の「女殺(おんなごろし)油地獄(あぶらのじごく)」に始まり、40周年の「国性爺(こくせんや)合戦」、50周年の「セロ弾きのゴーシュ」、60周年では手塚治虫原作の「火の鳥」を舞台化した。子どもだけでなく大人も楽しめる作品に取り組む背景には、人形劇をとりまく環境の変化がある。人形劇の主な観客である子どもの減少だ。

ピーク時に年間250校ほどあった学校公演は、近年は20~30校ほど。全国各地のおやこ劇場やこども劇場も会員数が減っている。予算規模の縮小で、普段の公演は劇団員が少人数のグループに分かれて赴く小作品が多い。それだけに周年記念の公演では「アンサンブルで作る大きな作品で舞台の面白さを伝えたい」(東口)。原作ファンなど、新たな観客を劇場に呼ぶ狙いもある。

ゲームやネットなどデジタル情報に囲まれた現代の子どもたちは想像することが少なくなっている。「人形劇を通して、子どもたちに想像することが生きる力になると伝えたい」(東口)という劇団の思いは、「はてしない物語」のテーマとも重なる。

公演は9月2日新神戸オリエンタル劇場(神戸市中央区)、9日クレオ大阪中央・ホール(大阪市天王寺区)、15日メイシアター中ホール(大阪府吹田市)で。

(大阪・文化担当 小国由美子)

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