甲子園8強に近畿勢3校、守備・走塁でも光った技
甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれた第100回全国高校野球選手権大会で、大阪桐蔭(北大阪)が史上初となる2度目の春夏連覇を果たした。近畿勢は例年より2校多い8校が出場し、大阪桐蔭、近江(滋賀)、報徳学園(東兵庫)が8強入り。共通するのは投打のバランスのよさだが、守備、走塁のレベルの高さにも目を奪われた。
大阪桐蔭は決勝までの6試合で計12失点。1イニングで2点以上失ったのは1度しかない。「最少失点」で傷口を広げず、守備から攻撃へとリズムよく試合を組み立てたことが、安定感のある戦いにつながった。
特に印象的だったのが済美(愛媛)との準決勝、二回の守備。相手に先制点を許し、さらに2死一、二塁から9番打者が中前打。2点目を許すか許さないか、という場面で、中堅・藤原恭大がホームへ好返球。二塁から生還を狙った走者を刺した。

今大会3本塁打の藤原は俊足・強肩も売り。二塁走者が三塁を回った光景を「ラッキー」と思ったという。送球はやや三塁側にそれたが、捕手・小泉航平が俊敏な動きでアウトにした。
実はこのプレーの直前、小泉が大仕事をしていた。先制点を許した場面で、右翼からの本塁返球は小泉の目の前で不規則に高く弾んだが、とっさの跳躍で好捕。もし後ろにそらしていたら走者は進塁し、この後の藤原の見せ場もなかったはずだ。
藤原は脚力でもすごみを発揮。普通なら単打という打球でも、外野手の守備位置が深いとみるや、迷うことなく二塁へ。まさに油断ならない速さだった。
走塁、守備のレベルでは、報徳の1番・遊撃、小園海斗も負けてはいない。聖光学院(福島)との初戦、右に左に二塁打を3本。全3点のホームを踏んだ。一回の左前への打球では、捕球体勢を見て二塁へ。外野の芝生に足がかかる守備範囲の広さと強肩も、超高校級だった。
近江は初戦、智弁和歌山(和歌山)との近畿勢対決で、タイプの異なる4投手の継投で相手打線を翻弄。2年生捕手の有馬諒も好リードが光った。有馬は前橋育英(群馬)との2回戦の九回、捕手らしい読みで直球を狙い、サヨナラ打も放った。
だが、準々決勝では金足農(秋田)にサヨナラ負け。1点リードで迎えた九回、無死満塁から三塁前へのバントで2ランスクイズを決められた。金足農の逆転劇を期待する大歓声が場内を包む中、「雰囲気にのみ込まれた」という敗戦は残念だったが、プレーの中心にいた有馬ら3人の2年生が悔しさをバネに成長することを望みたい。
(影井幹夫)