普段使いも優れもの 災害で頼れるアウトドア用品11選

普段使いし慣れよう
地震や集中豪雨など、大規模災害への備えは誰もが気にかかる。非常用持ち出し袋は用意しているものの、実は中のグッズをどう使っていいかよく分からない、という人は多いだろう。防災用品の選び方について、危機管理教育研究所代表の国崎信江さんは「いかに日常使いできるかが重要」と指摘する。
いざというときに取扱説明書のページをめくっている余裕はない。普段から扱い慣れているものなら使い方も分かるからだ。デザインや機能が優れたアウトドア用品は、たまのお出かけやレジャーはもちろんのこと、日常生活の場でも思った以上に活躍するものだ。
一方、平常時に活躍することはほとんどないとはいえ、トイレ関連のグッズはやはり用意しておきたい。「被災生活はトイレの心配がつきもの」。市民防災ラボ代表の玉木貴さんはそう強調する。浄水槽が被災で壊れたり、下水道の復旧が遅れたりすることも多い。トイレに行けないストレスで体調を崩すことさえある。持っておくと安心感が段違いだ。
風よけ付きコンロ、短時間で沸騰(イワタニ)

バーナー外周に二重の風防ユニットを設けたカセットコンロ。強い風もさえぎり、屋外でも安定した炎が出る。五徳に載せる鍋や調理器具のサイズ・形状は問わない。炎が横倒しにならずに鍋底に当たり、短時間で沸騰するため燃料の節約にもなる。家庭の卓上コンロとしても普段使いできる。
「災害の時にものを温める器具は絶対に必要。カセットボンベを多めに備蓄しておけば活用範囲が大きく広がる」(坂口隆夫さん)。持ち運びできる樹脂製のキャリングケースが付属。「カセットフーのシリーズは劣悪な環境でも使えるのが安心」(SAMさん)、「東日本大震災の時はこれで鍋料理を作ってしのいだ」(納富廉邦さん)、「操作が簡単で子供でも使える」(菰下了さん)など多くの支持を集めた。
(1)岩谷産業(2)8640円(3)幅359×奥行き278×高さ115ミリ(本体)(4)より火力が強い「カセットフー BO EX」など(5)03・5405・5615
便や尿を固めて非常時も安心(サニタクリーン)
便や尿の水分を凝固させる特殊シートがついた携帯トイレと、防臭袋がセットになっている。携帯トイレは広げるだけで使えるが、洋式便器にセットすることもできる。「これとポンチョを非常持ち出し袋に入れておけば、ひとまず用を足せる」(小林孝延さん)。
アウトドアはもちろん、災害発生時、子連れでのお出かけでトイレに間に合わないときなどに持っておくと安心。吐しゃ物の処理、ペットのフン入れにも役立つ。密閉できるチャック袋は臭いや水分を漏らさず、丈夫で繰り返し使用できる。「あるだけで精神的に落ち着く。バス、船、飛行機での汚物入れとしても使える」(菰下さん)。紙おむつと同様に焼却処理が可能。
(1)総合サービス(2)540円(3)携帯トイレは550×650ミリ(4)簡易トイレと便袋のセットなど(5)0120・980・329


防水機能付きヘッドランプ(ブラックダイヤモンド)

山岳用品で定評のある米国のブランドの発光ダイオード(LED)ヘッドランプ。光量を最大にすると65メートル先まで照らし出せる。夜間の避難時や停電時には両手が空くヘッドランプが便利だ。「子供を抱っこしながらの避難などに欠かせない。半透明のものをかぶせればランタンにもなるので、ヘッドランプは一つあると万能」(あんどうりすさん)。調光機能やストロボ機能もある。
平常時は「夜間のジョギングにも使える」(宮丸みゆきさん)。軽量で防水機能もある。
(1)ロストアロー(2)3564円(3)86グラム(4)色はソルトウォーター、ブラック、アルミニウム、グラス(5)049・271・7113
水なくても使える(オーラルピース)

歯磨きと口内保湿用のジェル。原料は天然由来で体内に入っても問題ないが、残ったジェルが気になるなら拭き取るか軽く吐き出せばよい。指に取って口に塗ればドライマウス対策にも。「高齢者や要介護者を中心に口腔(こうくう)内の雑菌が肺に入り、肺炎や敗血症を起こす災害関連死は多い。被災生活でのオーラルケアは重要」(玉木貴さん)。個包装タイプもある。「被災時は水分を十分取れず、ストレスで唾液が減る。口腔衛生用品は欠かせない。歯磨きできない仕事中も使える」(宮丸さん)
(1)トライフ(2)1080円(3)50グラム(4)低刺激の「クリーン&モイスチュア」、乳幼児も使える「サンシャインオレンジ」など(5)045・663・2101
デリケートゾーンを自分で洗浄(徳重)

1回使い切りのお尻洗浄キット。指でポンプの部分を押すと精製水が噴き出す。気になるデリケートゾーンを洗浄できる。「オムツで荒れやすい乳児や、男性よりもぼうこう炎になりやすい女性、衛生に気をつけなくてはいけない妊婦には持っていてほしい一品」(宮丸さん)。海外旅行やキャンプでの衛生対策にもなる。「女性は体を洗えない状況で尿路感染症や腎う炎にかかることがある」(玉木さん)ため、病気の予防にも有効だ。コンパクトで非常用持ち出し袋にも入れやすい。製造後5年間は使用可能という。
(1)徳重(2)648円(3)16ミリリットル入り×3本(5)0566・84・5630
放電防ぎスマホの充電も(コールマン)

停電時やキャンプ時に役立つLEDランタン。リチウムイオン電池内蔵で乾電池は不要。放電を防ぐ機能があり、充電後に保管しておいてもすぐ使える。1回の充電で連続5~70時間点灯する。「インテリアにもなじむ木目調なので、枕元に置いてベッドサイドランプとして普段使いできる」(牛島義之さん)。USBポートを備え、携帯電話、スマートフォン、タブレットの充電が可能。「災害時の不安を解消するのは明かり。価格も手ごろで、スマホ充電ができるのは心強い」(坂口さん)
(1)コールマンジャパン(2)9158円(3)直径130×高さ280ミリ(4)ブラック(5)0120・111・957
防水性、衣類入れや浮袋に(キャラバン)

日本の登山用品メーカーが作った筒型の防水サックは、衣類や貴重品を入れるほかにも様々な使い道がある。空気を入れれば緊急の浮袋にも。「浮袋、給水袋、ランドリーバッグと多用途なのが魅力。日常的にも使える点でコストパフォーマンスが高い」(国崎信江さん)。「ぬらしたくない物を入れておくのはもちろん、ぬれた物や汚れ物を入れておくのにも使える」(小林さん)。サイズ、色の展開が豊富。「軽くて丈夫なのは頼もしい」(納富さん)。
(1)キャラバン(2)15リットル2376円、25リットル2808円(3)15リットルで底面の直径220×高さ480ミリ(4)2、5、10、20リットル。色はダークレッド、インディゴなど(5)03・3944・2331
折り畳み椅子、持ち運び簡単(ソルシオン)

脚部を開き、座面を押し込むだけで座れる折り畳み椅子。ポリプロピレン製で水や汚れに強く、屋内外どちらでも使える。「地面がぬかるんでいたりぬれていたりする時に便利」(牛島さん)。耐荷重100キロ。折り畳んだ時の厚さは3センチで場所をとらず、持ち運びも容易だ。「被災生活では長蛇の列に並ぶことが多く、折り畳みの椅子はかなり重宝する」(国崎さん)。座面は尻の形に合わせた曲面で疲れにくい。セットで使えるテーブルもある。
(1)イケックス工業(2)座面の高さ18センチのPATATTO180で1598円(3)高さは他に25センチと32センチ。色はレッド、オリーブ、ブラックなど全部で5色(5)052・253・8881
簡単に設営、小さく収納(ケシュア)

テントの設営に慣れていなくても、バックルを2カ所外すだけで開くことができる。遮熱・遮光機能があるため夏でも涼しい。「価格やサイズ、簡便さのバランスが良い」(納富さん)。避難所などで快適に眠りたい時や、プライバシー確保に。折り畳みにややコツがいるが、直径74センチの円形になり付属のバッグに入れられる。「使わない時はコンパクトに収納できる」(牛島さん)
(1)デカトロンジャパン(2)1万2900円(3人用)(3)幅180×長さ210センチ、最大上部空間は高さ104センチ(内寸)(4)2人用あり(5)https://www.decathlon.co.jp/
畳めるLEDランタン(モチヅキ)

太陽光で充電できる立方体のLEDランタン。使わない時は折り畳んで保管できる。約500回の繰り返し充電が可能という。「自然エネルギーで長期間使用できるのがいい。コンパクトなことも美点」(SAMさん)。窓際に置いておけば日中に充電され、夜間は「常夜灯としてベッドサイドに使える」(菰下さん)。
(1)モチヅキ(2)3672円(3)幅・奥行き・高さとも11センチ(4)白色灯の「クールブライト」と5色に光る「ファイブカラー」(5)0256・32・0860
雨水ろ過して飲用に(グレイル)

浄水カートリッジを搭載したボトルで、ウイルスや細菌、寄生虫を15秒で99%以上除去する。断水時などに「風呂水や雨水などをろ過して飲用にできる」(牛島さん)。アウトドアや災害時のほか、飲料水に不安のある海外旅行にも持って行ける。カートリッジは交換式。「川の水を飲んでみたり、料理をしてみたり、使いこなしておくとよさそう」(小林さん)
(1)モンベル(2)7538円(3)直径73×高さ245ミリ、容量473ミリリットル(4)ブルー(5)06・653
◇ ◇ ◇
ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。商品名、ブランド名(1)製造元、輸入元、販売代理店(2)税込み価格例(3)大きさや容量、重量(4)商品展開、色やサイズなど(5)問い合わせ先電話番号、情報サイト。モデルは石井亜矢子。写真は1~8位(製品単体の写真除く)が岡田真撮影、9~10位はメーカー提供。
調査の方法 ICI石井スポーツなどのアウトドア専門店や専門家の推薦をもとに、アウトドア用品23商品をリストアップ。専門家10人に実際に触れて選んでもらった。「避難生活やインフラが止まった環境で役に立つ」「日常生活や旅行・レジャーでも使える」「アウトドア活動に無縁な人でも使いやすい」といった観点から1~10位まで順位をつけてもらい、編集部で集計した。
今週の専門家 あんどうりす(アウトドア防災ガイド)▽牛島義之(アウトドアライター)▽国崎信江(危機管理教育研究所代表)▽小林孝延(アウトドア愛好家)▽菰下了(好日山荘チーフ)▽坂口隆夫(市民防災研究所理事)▽SAM(アウトドアライター)▽玉木貴(市民防災ラボ代表)▽納富廉邦(ライター)▽宮丸みゆき(NPO法人ママプラグ理事)=敬称略、五十音順
[NIKKEIプラス1 2018年9月1日付]
NIKKEIプラス1の「何でもランキング」は毎週日曜日に掲載します。これまでの記事は、こちらからご覧下さい。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界
関連キーワード