サウスポーの視点(山本昌)

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得意もあれば苦手も 「球場との相性」の不思議

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2018/9/2 6:30
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巨人が強かった90年代、中日はなかなか東京ドームで勝てなかった。当時、チーム内でまことしやかにささやかれたのが「巨人は先発によってマウンドを変えている」という風説だ。「きょうは斎藤(雅樹)だから低いぞ」「桑田(真澄)だから高いな」。そもそもそんなことはできるわけないのだが、先輩たちは半ば真面目に口にしていた。「ベンチに隠しカメラかマイクが仕掛けていないか」「サインを盗まれている可能性もある。すべて変えよう」。こうなるとキリがなくなる。

疑心暗鬼、普段着の野球阻む

冷静に考えれば、こんな疑心暗鬼にとらわれた時点で既に後手に回っている。戦々恐々と戦っているから、普段着の野球ができなくなる。2006年、中日は優勝を争った阪神にナゴヤドームで10連勝した。こちらに特別な意識はなくても、後になって聞くと、相手はやはり「ナゴヤドームには何かある」と思っていたという。有利に試合を進めてもミスなどから崩れ、勝手にコケてくれていた。阪神の岡田彰布監督は対策として甲子園のブルペンにナゴヤドーム仕様のマウンドをつくらせた。しかし中日にしてみれば、そこで投げている選手を調べれば先発投手の予想がつくのだから(当時はまだ予告先発ではなかった)、どちらを利したかはわからない。

8月12日の広島戦に勝ち喜ぶ巨人ナイン。マツダスタジアムでの連敗を13で止めた=共同

8月12日の広島戦に勝ち喜ぶ巨人ナイン。マツダスタジアムでの連敗を13で止めた=共同

ナゴヤドームができる前はナゴヤ球場が本拠だった。ドームに比べれば明らかに狭くて古かったが、それはそれで風情があった。まだ明るさが残る中、ざわざわとした喧騒(けんそう)の中で試合が始まり、徐々に暮れていく。暗くなるとどこからともなく2匹のコウモリが現れ、マウンド付近を飛び回っていた。「昼間はどこにいるんだろう」。ナイターではそんなことを考えていた。

当時の収容人数は3万5000人といわれていたが、実際は2万8000人程度。ぎっしり埋まった熱気のあるスタンドがテレビに映ると、ファンは生で見たくなる。カウンターしかなく、行列ができているラーメン店の前を通ると是が非でも食べてみたくなるのと同じだ。それが連日満員につながっていたのだろう。広いドームになると空席も増えるため「いつでも行ける」とファンの切迫感は薄れる。器が大きいのも一長一短だ。

最適とは限らぬ恵まれた環境

ナゴヤ球場での経験は投手としての礎にもなった。一発を避けるために、低めをついてゴロを打たせる基本が身につき、逆風になる方向に飛ぶよう配球を工夫することも覚えた。やはり狭かった広島市民球場での強力赤ヘル打線との対決も、度胸と自信を育んでくれた。

近年、ヤフオクドームや楽天生命パーク宮城で外野フェンス前にテラス席が設置され、ホームランが出やすくなった。一発逆転が起きやすくなり、投手には厳しくなったが、私は歓迎している。個人成績が落ちるとしても、条件は相手も同じだ。味方打線の援護も増えるわけで、しっかりと空振りを取れ、ゴロを打たせられる投手が相対的には有利になる。いい投手が育つには、恵まれた環境が最適とは限らない。

(野球評論家)

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