2018年9月20日(木)

「ベネズエラ危機知って」 滞在38年の画家、絵で訴え

中南米
社会
2018/8/29 9:31
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 深刻な経済危機に陥っている南米ベネズエラに、2016年まで38年間暮らした画家小谷孝子さん(70)=千葉県浦安市在住=が、絵を通して現地市民の窮状を訴えている。食品や医薬品不足が悪化の一途をたどり、国外に逃げ出す人々が後を絶たない。「地球の裏側の現実にも目を向けて」と呼び掛けている。

 深刻な経済危機に陥っている南米ベネズエラの人々の窮状を絵を通して訴える小谷孝子さん(兵庫県宝塚市)=共同

 憂いを帯びた顔で赤子を抱く母親。和紙を貼り付けた画用紙にパステルで描いた作品は、母親のまなざしにベネズエラで苦しむ人々の心情を投影した。「これまで普通に暮らしてきた人々が飢えにさいなまれていった」と小谷さんは振り返る。

 原油確認埋蔵量が世界一のベネズエラは、1999年に就任した反米左翼の故チャベス前大統領による社会主義的な政策の行き詰まりや、後継のマドゥロ政権下での原油価格下落で財政が窮迫。生活必需品の輸入が滞り、ハイパーインフレにも見舞われている。

 小谷さんは結婚を機にベネズエラに移住。首都カラカスでは2013年以降、スーパーの棚から日用品が姿を消し始め、14年には、わずかな食料を入手するため数時間、店に並ばねばならなくなった。「赤子に与えるミルクがなく、米のとぎ汁やパスタのゆで汁を飲ませる母親もいた。食べ物を得ようと大人や子どもが街中でごみ箱をあさる光景が、あちこちで見られた」という。

 治安が悪化して外国人を狙った強盗や殺人が頻発するようになり、「次第に心に余裕がなくなって、人間性が失われていくのを感じた」。16年3月、日本に帰国した。

 「自分にできるのは、絵を通して一人でも多くの人にベネズエラの実情を伝えること」。10月1~6日には東京・銀座煉瓦画廊で「ベネズエラからのたより」と題した個展を開き、第二の故郷を思って描いた人物画など約70点を展示する。

 小谷さんは「政治の停滞が、市民生活にこれほど深刻な影響を及ぼすことになるとは思いもしなかった」と回顧し、「ベネズエラのような危機は日本でも起こり得る。政治に無関心であってはならない」と訴えている。

〔共同〕

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