2018年9月26日(水)

北朝鮮、「人質」カード切らず 日本人男性、早期解放 人権批判回避狙いか

政治
朝鮮半島
北米
2018/8/28 21:00
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 【ソウル=鈴木壮太郎】北朝鮮は28日、拘束していた日本人男性、杉本倫孝氏を追放した。日本政府関係者によると、杉本氏は北京を経由し同日夜、羽田空港に到着した。朝鮮中央通信は「人道主義の原則に従って寛大に許した」と強調しており、人権侵害国家との批判をかわす狙いもあったとみられる。

 28日、北朝鮮から国外追放処分となり北京国際空港に到着した杉本倫孝氏(共同)

 杉本氏は映像関連の仕事にかかわり、外国旅行会社が企画したツアーを通じて北朝鮮に入ったもようだ。西部の南浦を訪れたとされる。拘束が明らかになった11日から2週間あまりの早期に解放された。背景には北朝鮮が2017年6月に解放した米国人大学生オットー・ワームビア氏の一件があった可能性がある。

 ワームビア氏は約1年半の抑留生活で健康を害し、昏睡(こんすい)状態で解放され死亡した。米世論は硬化し、同年11月の米国による北朝鮮の「テロ支援国家」再指定につながった。「人質」を外交カードに使う手法は北朝鮮の常とう手段だったが、自らの首を絞めかねないと判断。早期解放で国際社会の批判を避けようとしたようだ。

 日本政府側は8月上旬に拘束の事実を把握した後、北京の大使館ルートで北朝鮮側に解放を働きかけた。英国など北朝鮮と国交を持つ国にも協力を要請した。拘束が明るみに出た後も事実関係について「事柄の性質上、コメントは控える」(菅義偉官房長官)と言及を避けてきた。不用意に発信すると北朝鮮が対日外交のカードにする可能性があったためだ。

 安倍晋三首相は日本人拉致問題の解決に向け北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長との直接対話に意欲を示す。今回の早期解放が今後の北朝鮮との交渉にどう影響するか、慎重に見極める。外務省は29日にも杉本氏から拘束に至った経緯など事情を聴取し、北朝鮮の意図を分析する。

 杉本氏の解放について北朝鮮が対日外交に込めたメッセージには見方が分かれる。韓国・慶南大極東問題研究所の趙真九(チョ・ジング)助教授は米朝の非核化交渉が膠着しているのを踏まえ「日本との関係を改善したいシグナルだ」と語る。韓国統一研究院の李奇泰(イ・ギテ)副研究委員は「日朝関係に直接影響しない」と述べた。

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