2019年3月19日(火)

障害者雇用、「無責任」の連鎖 3460人水増し

2018/8/28 19:42
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中央省庁が雇用する障害者数が水増しされていた問題で、厚生労働省は28日、省庁の8割に当たる27行政機関で計3460人分を不適切に算入していたと発表した。国税庁では1000人超、国土交通省では600人超にのぼった。省庁間で責任を押しつけ合う構図もみられる。霞が関の中央省庁に無責任な対応が広がり、行政の緩みが改めて露呈した。

制度を所管する加藤勝信厚労相は28日午後に開いた関係府省連絡会議で、「法定雇用率の速やかな達成に向けた採用計画を早急に策定し、確実に実行してほしい」と語った。来年中には達成を求めるという。政府は第三者による検証チームで原因や故意の水増しかどうかなどを分析する。

国や地方自治体、民間企業は1976年から一定割合以上の障害者を雇うことを義務付けられた。障害者の就労機会を広げ、自立した生活を促す目的がある。企業には外部機関によるチェック体制がある一方で、中央省庁や自治体に点検の仕組みはない。

水増しを招いた原因の一つが、雇用の手続きについて各省庁の解釈が分かれたことだ。

厚労省が05年につくったガイドラインは障害者手帳などの書類で確認すると定めている。一方、厚労省が雇用状況を確認するための通知は「身体障害者とは、原則として身体障害者手帳の等級に該当する者」。これを拡大解釈して、手帳などを確認しない省庁があった。職員本人による自己申告での判断や、手帳の期限切れなどずさんなケースが続出した。

各省庁の体制にも問題がある。障害者雇用の実績は省庁ごとにまとめる。多くは集計された数値を課長級が決裁して厚労省に報告するだけで、「大臣や局長にあげる数値ではない」(経済官庁幹部)。ある省で決裁する立場にいた課長は「実態を確認せずにそのまま通してきた」と語る。

こうした無責任が横行してきただけに、霞が関では責任の押しつけ合いが始まっている。

水増しがあった経済産業省。ある幹部は「ほとんどの省庁で問題が起きたのは、厚労省の指導が適切でなかったせいでは」と語る。各省庁はガイドラインを守れていなかったが、財務省幹部は「意図的な水増しではない」と主張する。

福島大の長谷川珠子准教授は「対象となる障害者は原則、障害者手帳を持つ人ということは国が障害者雇用促進法を改正するたびに説明している。各省庁の理解していなかったという理由は信じがたい」と話す。

一方で制度を所管する厚労省は、各省庁から上がってくる数字をまとめるだけの対応だった。厚労省幹部は「各省庁が責任を持って適正に進めるべきだ」と話す。

「障害者や家族の思いをないがしろにしている」。8月22日に開かれた厚労省の労働政策審議会障害者雇用分科会。障害者雇用の水増し問題に対し、委員らは厳しい批判の声を上げた。

水増しの原因をはっきりさせ、再発防止の対策をとれるかどうか。「責任のある」対応を示せなければ、行政に大きな禍根を残すことになる。(村越康二、島本雄太)

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