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今日も走ろう(鏑木毅)

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追い詰められた状況打破 歴史小説に生き方学ぶ

2018/8/30 6:30
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先日ある企業経営者の方から、どれほど忙しくても日々歴史小説を読む時間だけは捻出しているとうかがった。歴史上の人物が抜き差しならぬ事態に陥った際、どのように考えて決断を下したのか、どんな気構えで難局に立ち向かったのかを学べるらしい。企業経営のみならず、生き方の指針となる素材があふれており、歴史小説を読むことが厳しい荒波を乗り越える力の源になっているそうだ。

プロランナーに転身した当初、目標に向かって努力することにやりがいはあったものの、一方で不安と恐怖に襲われていた。そのような時に司馬遼太郎さんの作品が私の心の支えとなった。特定の人物にフォーカスし、その人物が時代を動かしただけでなく、我々が生きる現代にも少なからずの影響を与えているのだと教えてくれる作品は特に印象に残る。ビッグレースのスタートラインでは「竜馬がゆく」のフレーズ「世に生を得るは事を成すにあり」を思い出す。

ビッグレースのスタートラインではいつも歴史小説のフレーズを思い出す

ビッグレースのスタートラインではいつも歴史小説のフレーズを思い出す

作品では「花神」が好きだ。これは幕末に官軍を率いて、明治新政府を打ち立てた大村益次郎が主人公。尊王攘夷と世の思想が狂乱的にうごめく時代を冷静に分析し、技術者的な立場から着実に明治維新をやり遂げた。物事を科学的に分析し、積み上げる姿勢やどんなに悲観的な状況にも己を失わずに突き進む姿は、脚に大きなけがを負い不安を抱えて世界大会にのぞむ私の心をどれほど支えてくれたことだろうか。この本に出合わなければ追い詰められた状況を打破できなかったとさえ思う。

もう一編は明治維新を経た新生日本が日露戦争に向かうストーリーを描いた「坂の上の雲」だ。この作品は戦争賛美のイメージがある気がして、長年手をつけなかった。実際に読んでみると予想とは全く異なっていた。松山出身の陸海軍で活躍する秋山好古と秋山真之、そして歌人の正岡子規の3人を中心に当時の政治家、軍人が登場し、いかに日露戦争という難局を切り抜けたかというストーリー。

感銘を受けたのは登場人物の圧倒的な熱量の高さだ。弱小国家の明治政府が欧米に追いつくため、もがきつつもまい進する姿は現代の感覚からはやや異常にも思える。とはいえ不思議な力も得られ、またリーダーとしていかに周囲をけん引すべきかのヒントも見出すことができる。実は私は2カ月前、過労によるウイルス感染で大きな大会への出場が断たれ、自暴自棄になりかけていたが、この本を手にし、投げ出さずにまた一からコツコツとやり直そうと平静に戻ることができた。

モチベーションを高めるような自己啓発書は世の中にあふれている。歴史小説には過去の実在の人物がどのような思いで事をなしたかというストーリーが読み取れる。同じ人間として現代を生きるヒントと熱い思いが詰まっており、我々に別の角度からアドバイスをくれるものと感じる。

(プロトレイルランナー)

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