2019年5月21日(火)

(対決関西)ご当地キャラ ひこにゃんvsせんとくん

コラム(地域)
2018/8/28 15:00
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地域の特産品や観光名所がかわいらしく姿を変えた「ご当地キャラクター」は、自治体事業などのPRに欠かせない存在だ。関西では滋賀県彦根市の「ひこにゃん」と奈良県の「せんとくん」が知名度で全国区。ご当地キャラのブームは一段落した感があるが、地域を盛り上げようとまだまだ頑張っている。(岡田直子、橋立敬生)

ひこにゃん 許諾料稼いで親孝行

彦根市などの各種イベントにも参加して場を盛り上げる

彦根市などの各種イベントにも参加して場を盛り上げる

ユニークな見た目から、滋賀県彦根市の「ひこにゃん」はご当地キャラクターブームの火付け役になった。大久保貴市長が「ひこにゃんなくして彦根市は語れない」と言うほどの存在だ。

誕生は2006年4月13日。翌年に控えた国宝・彦根城築城400年祭を盛り上げるためのイメージキャラクターとして生を受けた。彦根城主、井伊家ゆかりの白猫をモデルに、赤い兜(かぶと)をかぶり、2足歩行を得意とする。祭りが終わっても存続を願う声が市に寄せられ、それに応えて彦根城に「住み続け」て観光客らにあいきょうを振りまく。

土産品やグッズの新規承認は年間400件以上。売上高の3%にあたる使用許諾料収入は13年度の2630万円をピークに減少傾向だったが、11年ぶりにイラストのポーズを追加、17年度は前年度比6%増の1504万円と持ち直した。

今年2月からは無料通信アプリ「LINE(ライン)」で使えるスタンプにも起用された。全部で16種類あり、にこやかな表情以外に熟睡したり「ダメ」といやがったり新たな一面をみせている。ダウンロード数は7月末現在4936に上る。

ご当地キャラの先頭を走る自負からか、せんとくんなどについては「ライバルというよりも一緒に盛り上げていきたい」(市フィルムコミッション室)と余裕の弁だ。

ただ、人気ゆえの悩みもある。「ひこにゃんを知っていても彦根市と結びつかず、市のことを知らない人も多い」(大久保市長)。キャラクターに任せるだけでは自治体の知名度は上がらないという現実。市が戦うべきは、ほかのご当地キャラではなく、ひこにゃん人気そのもののようだ。

せんとくん 奈良産品を無償でPR

鹿の角が生えたような奇抜なデザインが当初議論を呼んだ

鹿の角が生えたような奇抜なデザインが当初議論を呼んだ

奈良県のマスコットキャラクター「せんとくん」は8月から商業目的の利用が無償となった。奇抜なデザインが当初議論を呼んだことが結果的に奏功し、今でも認知度は高い。県はお土産用のグッズにとどまらず、農産物など県産品のアピールで積極利用を期待する。

せんとくんは2008年、平城遷都1300年記念事業のキャラクターとして誕生した。「童子」に鹿の角が生えたようなデザインは東京芸術大大学院教授で彫刻家の籔内佐斗司氏による。コンペで寄せられた約20件から、著名な画家や経済評論家らでつくる委員会で選定された。県観光プロモーション課の野田康彦課長補佐は「ひこにゃんなど様々な事例を参考にした。後発なので、単にかわいいだけではスルーされてしまう恐れがあった」と振り返る。

1300年祭が開かれた10年には関連グッズの売り上げが約50億円に上ったという。翌年、せんとくんが「県職員」となってからは、商業利用の場合のみ売り上げ予定の3%のライセンス料を設定。11年度こそ約700万円の収入があったが、17年度は約160万円にとどまっていた。

県によると、11~18年のライセンス収入は計約2200万円。委託料など経費も掛かっているため利益を生んでいる状況ではなかったが、3%で割り戻すと関連グッズの売り上げは8年で約7億4千万円となる計算だ。

今回の無償化で企業などから早速、複数の申請が舞い込んでいる。現在は観光客向けの土産物が中心だが、県が期待するのは熊本県の「くまモン」のように農産物のパッケージなどでの利用。工芸品も含めた県産品や「奈良」をPRする力が問われることになる。

くまモン予算は億単位
 式典など堅い場を和ませたり地域の祭りや催しの集客に一役買ったり、ご当地キャラクターの役割は多彩だ。ひこにゃんとせんとくんは共に歴史に根ざしたキャラ設定で、その存在は歴史・文化の厚みがある「関西らしさ」を知ってもらうきっかけにもなっている。
2018年度の予算額はせんとくんが約1千万円、ひこにゃんが約4600万円。運用方法などが異なるため単純な比較は難しいが、例えばご当地キャラの代表格の熊本県のくまモンは億単位に上り、国内外への出張も多い。それぞれを高いとみるか低いとみるか。自治体は「キャラクターに何を求めるのか」を明確にし、市民の理解を得ながら効果的な戦略を立てることが求められている。

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