2018年11月17日(土)

米、WTO「判事」再任を拒否 紛争解決処理マヒの恐れ

トランプ政権
貿易摩擦
ヨーロッパ
北米
2018/8/28 1:03
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【ジュネーブ=細川倫太郎】米国は27日、世界貿易機関(WTO)に対し、9月に任期切れとなる上級委員の再任を拒否すると伝えた。通商筋が明らかにした。トランプ米政権はWTOに不公正な扱いを受けていると批判している。再任されなければ残る委員は3人で、審理に必要な最低限の人数となる。WTOの重要な柱である紛争解決処理がマヒに陥るのが避けられない。

WTOの最高裁判事にあたる上級委員の任期は4年で、反対がなければ2期まで務める。WTOは原則、加盟国の全会一致方式をとっているため、米国が拒否する限りは上級委員の選定が進まない。

上級委員を巡っては当初、欧州連合(EU)と米国などの間で後任の選定プロセスで意見が食い違い、メンバーが徐々に減少。7人枠のうち現在3人が欠員となっている。9月末にはモーリシャス出身の委員の任期が切れる。WTOでは1案件を3人の上級委員が担当する決まりがあり、今回、再任されなければギリギリの体制となる。

米国と中国の貿易戦争が激しくなる中、紛争案件は増え続け、内容も複雑化している。上級委員の顔ぶれが決まらず、貿易の紛争解決の機能が停止する懸念は強まっている。

米国が再任を阻止する背景には、WTOへの不満がある。米国はオバマ前政権のころからWTOの紛争処理に不満を抱えていたとされる。トランプ政権になり、中国を念頭に企業への補助金や知的財産権侵害の問題にWTOが十分に対応できていないといらだちを隠さない。上級委員の下した判決には「権限を越えた判断をしている」と主張し、審理期間が長すぎることへの不満もあらわにしている。自国への不利な判決も多いとし、WTOに改革を求めている。

WTOの紛争解決手続きは裁判に似た制度で、二審制となっている。まずWTOに提訴した国は相手国に2国間協議を要請する。60日以内に解決できなければ、一審に相当する紛争処理小委員会(パネル)の設置を求めることができる。その後、パネルは判決にあたる報告を出し、いずれかの国が結果を不服とした場合、最終審にあたる上級委員会に上訴できる。

ただ、上級委員会の機能がマヒしていれば、一審で敗訴した側が上訴しても紛争は宙に浮く。トルコなど中国以外でも米国から高関税をかけられた国は、次々と米国をWTOに提訴している。ある通商筋は「米国は、紛争解決機能が停止していればいくら訴えられても痛くもかゆくもないとみている」と打ち明ける。

WTOでは途上国と先進国の対立など新しいルールづくりも停滞している。2017年12月にブエノスアイレスで開かれたWTO閣僚会合では加盟国の足並みがそろわず、閣僚宣言を採択できなかった。多国間貿易体制を支えてきたWTOは危機に直面している。

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