文明に物申す人材育む 兵庫県立大理事長 五百旗頭真さん(もっと関西)
私のかんさい

2018/8/28 11:30
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■兵庫県立大学の理事長に今春就いた五百旗頭真さん(74)は、防衛大学校長などを歴任した日本の政治外交史の第一人者。兵庫県西宮市出身で、京都大学で政治学の先達の薫陶を受け神戸大学教授を25年にわたり務めた。

 いおきべ・まこと 1943年兵庫県西宮市生まれ。京大法卒、81年神戸大教授。2006年防衛大校長、12年熊本県立大理事長、18年4月から現職。ひょうご震災記念21世紀研究機構の理事長も12年から務める。著書に「日米戦争と戦後日本」など。

いおきべ・まこと 1943年兵庫県西宮市生まれ。京大法卒、81年神戸大教授。2006年防衛大校長、12年熊本県立大理事長、18年4月から現職。ひょうご震災記念21世紀研究機構の理事長も12年から務める。著書に「日米戦争と戦後日本」など。

広島大学での講師や助教授時代も楽しく過ごしたが、神戸大教授に就く話をもらった時はやはりうれしかった。ふるさとの山河には心ひかれる。学生の指導にも熱がこもった。

「何をやってもいいけど、やる以上はしっかりと」というのが京大で体験した自由な学風。私も神戸大で教え子に「このテーマで論文を書きなさい」などと言ったことはない。ただし、博士論文を書く時には「世界で一番、そのテーマの一次資料にあたろう」とハッパをかけた。もちろん資料集めで満足してはだめ。「しっかり解釈して、世界に対するメッセージを出してこそ本物だよ」と伝えた。

社会を大きく捉え、文明のあり方にまで物申してきたのが、関西の伝統だと思う。私が指導や助言を受けた京大の猪木正道先生や高坂正堯先生も、歴代首相のブレーンを務めることがあったが、政策に細かく口を出そうとしたのではない。日本の針路を深く考えた執筆や発言に、政府などが関心を寄せた形だ。

高坂先生の著書「文明が衰亡するとき」は日本同様に通商国家だったベネチアなどの歴史を描いた上で、戦後日本の本質に迫っていた。ほかにも梅棹忠夫先生ら関西には独自の文明論で知られた論客が多い。

■米ハーバード大学に留学経験を持つ。日米とも「中央」とのほど良い距離感が大切と実感している。

自由な学風の京大で学んだ(五百旗頭氏は後列中央、猪木先生は前列右端)

自由な学風の京大で学んだ(五百旗頭氏は後列中央、猪木先生は前列右端)

東京では中央省庁との距離が近いこともあってか、識者も次々と来る目の前の仕事に対応することになりがちのようだ。関西は東京とのほど良い距離感を生かせる。反体制というより、社会を広く深くみて、独自の考えを示すのが役割だ。

1977年にハーバード大に留学した。米国の政治学者との縁もあったが、ワシントンなどからほど良い距離にあるボストンで学術に打ち込めるのも魅力。中央部から離れ過ぎると現実に触れる機会が減る。初めて米国に研究に出たのは74年。ある研究班で班長の高坂先生が忙しいということで機会が回ってきた。世界を知るチャンスを「すまんけどなあ」と切り出して若手に譲ってくれたのも、関西らしさかもしれない。

■兵庫県立大はビッグデータの解析・活用を学ぶ「社会情報科学部」、すべての科目を英語で学ぶコースを持つ「国際商経学部」を来春に新設する。

国立大の運営のための予算が減るなど日本の大学は厳しい環境にあるが、科学技術立県の県立大として、先端技術やグローバル時代に本気で対応しようと学部を再編している。

学生に誇りを持って学んでほしい。「これこそやるべきことだ」と自分で思えれば、人に何かを伝えることもできる。文明に物申すなど関西の良き伝統を語り継いでいくことも大切だ。

■1995年の阪神大震災では神戸大の五百旗頭さんのゼミ生も亡くなった。防災や復興に関わるようになり、2011年の東日本大震災の後には復興構想会議の議長も務めた。

弔い合戦の意識もあり、広い意味で安全保障として大災害から国民の安全をどう守るかを考えてきた。

理事長を務めるひょうご震災記念21世紀研究機構は「人と防災未来センター」などを擁するシンクタンク。震災の教訓を、総合的シンクタンクを創り国民のため生かそうとしているのは全国でここだけだろう。

これだけ災害の多い日本列島では「運が悪い」では済まされず、国民共同体として支え合おうという形が阪神大震災以降広がってきた。東日本大震災の後に国民が復興増税を受け入れたのもその例といえる。兵庫にも全国から助けてもらったお返しをしようとする志があり、大事にしたい。

(聞き手は神戸支局長 福田芳久)

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