2018年11月15日(木)

「地下神殿」放水路を観光資源に、見学会を民間運営

コラム(地域)
2018/8/27 15:00
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国土交通省関東地方整備局江戸川河川事務所などは、「地下神殿」と呼ばれ人気を集める首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)の見学会を民間企業が運営する社会実験を始めた。防災施設として国内初。民間が持つノウハウを生かし、観光施設としての魅力を最大限に引き出すことで多くの観光客を呼び込み、地域活性化につなげる狙いだ。

民間のノウハウも活用し、観光客を増やす(首都圏外郭放水路の見学会)

地下50メートルに広がる調圧水槽の巨大な空間。高さ18メートル、重さ500トンの柱59本がそびえる光景に圧倒される。「地下水の浮力で浮かび上がってしまうので、柱が重りの役割をしています」。地下神殿コンシェルジュの説明に参加者がうなずく。

同放水路は周辺の中川などの洪水を地下に取り込み、江戸川に流して浸水被害を防ぐ総延長6.3キロメートルの世界最大級の地下河川。インフラツーリズムの人気スポットの一つで、海外メディアも多く取材に訪れる。

ただ、業務を抱える職員による対応には限度があり、見学会は平日と月2回土曜のみで、月間約2300人までしか受け入れられなかった。市街地からは遠く、他の観光施設などとの回遊性に乏しいのも課題だ。

そこで同事務所と春日部市、商工団体などでつくる協議会は、民間開放による地域振興を検討。公募で連携事象者に東武トップツアーズ(東京・墨田)を選び、見学会を同社が毎日運営する社会実験を8月に始めた。

民間運営に伴い見学料金を1人650円(8月は500円)と有料化する一方、内容を見直し、魅力向上を図った。スペースシャトルが収まる大きさの第1立坑(たてこう)をコースに追加。年7回ほどの施設稼働時はこれまで見学を中止していたが、特別見学プランとして水が入った様子を見てもらうことにした。

外国人観光客も理解できるよう英語と中国語に対応した解説アプリも導入。ダムカードの放水路版を配布するほか、今後、地域産業を取り入れたオリジナル商品も開発する予定だ。

見学会に参加した同市の中学2年、只野大輝君(14)は「角度によって柱の見え方が違って面白い」と笑顔。参加者にはアンケートを実施し、改善に向けた参考にする。同事務所の担当者は「日本一のインフラ観光資源に育て、より多くの人に見てもらうのに最適な方法を探りたい」と話す。

春日部市の観光入り込み客数は13~16年に年間180万~185万人とほぼ横ばいで推移する。観光振興課は「アニメ、天然記念物の藤などの観光資源や農業、食事と組み合わせた回遊策を講じていきたい」と意気込む。バスツアーなどに組み込んでもらうためのPRも進める方針だ。インフラ施設を地域活性化に生かす新たな手法として注目される。(さいたま支局 山岡亮)

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