2018年11月20日(火)

国際協調は死んだのか(大機小機)

大機小機
2018/8/24 18:07
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通貨急落に端を発する「トルコショック」が新興国市場に負の連鎖を生んでいる。直接の原因になったのは米国とトルコの政治的な対立だが、根本的な背景は国際的な資金フローに対する新興国経済の脆弱性にある。対外的な債務を米ドル建てにせざるを得ないため、ひとたび自国通貨が対ドルで下落すると対外債務が膨張してしまう。このことが新興国経済の危機の連鎖を生み出しやすくしているのである。

この20年間で、新興国が世界の総生産に占めるシェアは大きく高まった。世界の貿易ネットワークに及ぼす影響も格段に大きくなっている。一方、経済規模や貿易量という観点から世界経済をみた場合、米国はもはや圧倒的な存在ではなくなっている。

しかしながら、話を国際金融市場に限定すると事情が異なってくる。米ドル建ての取引は今なお国際金融市場で支配的なシェアを保つ一方で、米ドル以外の通貨が果たす役割は依然として限定的なものにとどまっているのだ。こうした状況下で米国の政権が自国第一主義を掲げ、他国に及ぼす影響に無頓着になれば、新興国市場を中心に負の連鎖への懸念が高まるのは当然であろう。

さまざまな構造改革が行われた結果、新興国が対外債務を米ドルに依存することのリスクが以前ほど深刻ではなくなったとの指摘はないわけではない。しかし、金融のグローバル化が進行した現在では、かつてないスピードで大規模な資金の流出入が発生するようになった。しかも、そのような国際的な資金フローは、市場心理に影響を受けてしばしば大きく変化する傾向がある。仮に小さな国のニュースであっても、それが瞬時に世界を駆け巡る。市場をかく乱する可能性はむしろ、高まっている。

世界のあちらこちらで自国第一主義が台頭する中、主要7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)などによる協調のための国際会議は、すっかり影が薄くなってしまっている。ただ、国際金融市場の安定を保つには「米ドルが基軸通貨である」という視点に立った国際的な協調が今なお、最も有効である。国際社会はもう一度、政策協調の必要性を認識し、その実現を模索すべきだ。それが、負の連鎖を食い止める上での不可欠な道である。

(甲虫)

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