2018年11月15日(木)

英政府「合意なし離脱」で対策 貿易・金融停滞懸念

Brexit
政治
ヨーロッパ
2018/8/23 22:29
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【ロンドン=小滝麻理子】英政府は23日、欧州連合(EU)との間で何の合意もないまま2019年3月に離脱する場合を想定した対策を公表した。医薬品などの備蓄を進めるほか、関税手続きの増加に備えて国境管理の人員を増強する。ただ、アイルランド国境問題などあいまいな分野も目立つ。交渉の実質期限は10月に迫り、対応が遅きに失した面は否めない。

ラーブEU離脱担当相が同日、ロンドン市内で演説した。同氏は「交渉は進捗しており、良い内容で合意できる可能性が高い」と強調。そのうえで「政府はあらゆる可能性に備える」と述べ、対策の必要性を説明した。

英国は離脱後、無関税などを定めるEU単一市場・関税同盟からも抜ける予定。EUと新たな協定を結ばずに離脱すれば貿易などで大きな混乱が生じるおそれがある。

対策案は、EUとの合意がないまま離脱した場合、英国を拠点とした輸出入業者が税関の申告や安全対策など手続きが膨らむおそれがあると警告。取引の停滞に備え、輸送業者や税務の専門家などと事前に対策を検討するよう勧め、政府も人員を増強する。

今はEU域内で自由に流通する医薬品も入手に時間がかかるおそれがある。政府は製薬会社などに6週間分の医薬品の備蓄を求める。

EUとの金融取引やEU加盟国に住む英国民の年金受け取りに支障が生じる可能性も指摘した。英政府は合意がなくても、離脱後3年間はEUの金融機関が新たに免許を取得せず英国内で現状のまま営業できるようにする。EU側にも同様の対応を求めたい考えをにじませた。

英政府が公表した25分野にわたる対策は148ページにも及び、今後数週間でさらに追加の対策を発表する。EUとの離脱交渉が難航するなか、企業や国民に向け「合意なし離脱」のリスクを具体的に書き込むことで、国内で批判も強いメイ首相の離脱方針を受け入れるよう促すねらいも透ける。

一方、肝心の部分は明確さを欠く。交渉の最大の焦点となっている英領北アイルランドとEU加盟のアイルランドの国境問題を例にとると、合意なし離脱となった場合の貿易などの扱いはアイルランド政府に問い合わせるよう勧告し、事実上丸投げした格好だ。「対策を出すのが遅すぎる」との厳しい世論もある。

英政府とEUは今後数週間で離脱交渉を加速する。10月の実質期限までに合意ができなければ、合意なし離脱の可能性が高まるが、今回の対策が万全かは疑問が残る。

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