2018年9月22日(土)

最先端VR、ゲームに学べ 開発者会議に密着

コラム(ビジネス)
ネット・IT
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2018/8/25 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

 ゲーム開発者会議「CEDEC2018」がIT(情報技術)業界の注目を集めている。人工知能(AI)や仮想現実(VR)などの最先端技術を駆使しているのは、実はゲーム業界。製造業やネットサービスなどにも応用できるだけに、ITを使う側の企業の関心も高い。22日から3日間、横浜市のパシフィコ横浜で開かれた会議の様子を取材した。

 CEDECはゲームの業界団体、コンピュータエンターテインメント協会(CESA、東京・新宿)が主催するイベントだ。ハード・ソフトの区分なくゲーム業界の開発者らが集まり、講演を聞いたり交流したりする。毎年6000人以上が訪れる。

 ゲーム関連の技術者の間で特に大きな注目を集めているのは、AIを使ったゲーム制作の効率化だ。ハードウエアの進化により、高精細なグラフィックスを使った複雑なゲームの制作が可能となった。その一方でゲーム制作にかかるコストや手間は増え続けており、現場の負担になっている。

AI描画技術を紹介する米プロメディアンAIのアンドリュー・マキシモフCEO

AI描画技術を紹介する米プロメディアンAIのアンドリュー・マキシモフCEO

 「AIにグラフィックスを生成させることでコストを減らせる」と話すのはAI描画技術を手掛ける米プロメティアンAI(カリフォルニア州)のアンドリュー・マキシモフ最高経営責任者(CEO)だ。

 例えば3次元(3D)グラフィックスで海水の様子を描くには、従来は複雑な数学モデルを使って計算していた。AIに海水の描き方を学習させれば「人間のアーティストが見たままを絵に描くように、シミュレーションをせずに描く」(マキシモフCEO)ことが可能になり、少ない処理能力で実行できるという。このほか低解像度の画像をAIで補完することで、より高精細な映像に変換する技術も紹介した。

VR(仮想現実)機器を使った新しい遊びも展示した。乗馬フィットネス機器とVRを組み合わせ、空飛ぶドラゴンにまたがった気分を味わえる

VR(仮想現実)機器を使った新しい遊びも展示した。乗馬フィットネス機器とVRを組み合わせ、空飛ぶドラゴンにまたがった気分を味わえる

 CEDECの中心テーマであるVR・ARやAIは、IT業界全体のテーマでもある。現実の世界で応用するには技術的に未熟だったり、不確定要素が多い技術も、ゲームの世界であれば十分通用することは多い。

 例えば、ゲームの品質を高めるためにAIを使う手法は、ソフトのバグを発見したり、サイバー攻撃を検出したりする技術にも応用可能だ。

 ディー・エヌ・エー(DeNA)やスクウェア・エニックスなどのAI担当者によるパネルディスカッションでは、ゲームに不具合がないか確かめるためのユーザーテストでAIを使うノウハウや現状での課題を議論した。

 仮想現実(VR)ではゲームの枠を超えた次世代の姿が見えてきた。東京・池袋のサンシャイン60展望台で展開する「TOKYO弾丸フライト」など、施設型VRを展開するハシラス(東京・中央)は複数の利用者と歩き回れるVRの遊園地「オルタランド」の構想を紹介した。

「オルタランド」の利用イメージ

「オルタランド」の利用イメージ

 幅10メートル以上の体験施設内に、ヘッドセットやランドセル型のパソコンを背負った複数の利用者が入り、仮想空間内で乗り物に乗ったり、ゲームや散策を楽しんだりする。まるで映画や漫画の世界のように、別世界で別の自分になるという体験を提供する。

 ハシラスの安藤晃弘社長は「未来の遊園地というだけでなく、レジャーをすべて代替するものにしていきたい」と意気込む。9月の東京ゲームショウでの展示を目指す。

 拡張現実(AR)の活用にも注目が集まった。DeNAは配信するスマートフォン(スマホ)向けリズムゲーム「歌マクロス スマホDeカルチャー」のARを紹介した。

 このゲームでは楽曲に合わせてキャラクターが踊る高品質な3DCG(コンピューターグラフィックス)を制作しており「もっとキャラクターの踊りを見たい」という利用者の要望に応えた。イベントなどに合わせて、ファンがゲームを起動してカメラで読み取るとキャラクターが浮かび上がる。

 ゲームの楽しみ方が変化していることについても議論された。スクウェア・エニックスやコーエーテクモゲームスなどの担当者によるオンラインゲームについてのパネルディスカッションでは、ゲームの長時間プレーなどの問題について議論された。

 スクエニの斉藤陽介取締役は「ゲームや遊びの種類が多様化し、昔ほど長時間プレーする人はいなくなった」と指摘した。多人数参加型オンライン(MMO)ゲームもゲーム外のSNS(交流サイト)などでコミュニケーションを取るユーザーが増え、細かく遊べるように変化してきたという。また10年以上運営が続くゲームも出てきており、追加コンテンツの開発や運営に苦労していることも議論された。

 コーエーテクモゲームスの川又豊ディレクターは「4年ほど前からMMOが題材のアニメが人気を集めているが、VRやARが急激に進化を遂げており、オンラインゲームの未来の姿はそこまできている」と語った。今年話題を呼んだSF映画「レディ・プレイヤー1」のようなゲームで遊びたいと各社の担当者は期待を込めた。

 「ゲームの世界が最先端ITのテストベッドになっている」との声は、今回会場のあちこちで聞かれた。例えば、映像関連のAIを使うと、町並みの写真から車や家を消したり、逆に追加したり、天気を変えることもできる。こうしたAIはゲームだけでなく「自動運転のテストなどほかの産業にも応用できる」(プロメティアンAIのマキシモフCEO)と話す。

 ゲームで楽しんだ技術が、日常的な仕事に自然に応用されるようになる日は、そう遠くないのかもしれない。(松元英樹、桜井芳野)

■ゲーム開発者、男性はエンジニア・女性アーティスト
 男性は51%がエンジニア、女性は55%がアーティスト――。コンピュータエンターテインメント協会(CESA、東京・新宿)が実施したアンケートで、こんな結果が出た。CEDECに合わせてゲーム開発者の生活と仕事に関するアンケート調査したところ、ゲーム開発者は男性主体という印象が強いが勤務形態や就業時間などは男女で大きな差はなかった。
 アンケートの「職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる」という質問に対し「そうだ」と答えたのは男性が22%、女性が18%だった。仕事のコントロール度や上司の支援度も男女で差があまりなかった。
 働き方改革の動きがゲーム業界にも影響を与えていることもわかった。通常時の一週間あたりの就業時間は平均で36時間で2017年の調査の38時間を下回った。働き方に関しても、フレックスタイム制度が既に適用されている人が37%で、在宅勤務を希望する人は51%だった。
 調査はゲーム開発者などを対象に7月1~31日にCEDECの公式サイトを通じて行った。回答数は2454人で、男性が85%、女性が15%だった。(桜井芳野)

任天堂宮本氏「最大の環境変化はスマホ」

 コンピュータエンターテインメント協会(CESA、東京・新宿)が主催するゲーム開発者会議「CEDEC2018」が開幕した22日、「スーパーマリオ」の生みの親として知られる任天堂の宮本茂代表取締役が基調講演に立った。宮本氏が登壇するのは10年ぶり。その間のゲーム業界の環境変化について語った。

CEDECで講演する任天堂の宮本茂代表取締役(22日、横浜市)

CEDECで講演する任天堂の宮本茂代表取締役(22日、横浜市)

 宮本氏は「一番大きな変化はスマートフォン(スマホ)」とし、センサーやネットワーク通信の進化によって、ゲームの遊び方が変わったことに触れた。

 自社の戦略についても「1人でも多くの人に遊んでもらう上ではスマホゲームを無視できなくなった」と指摘した。2016年12月に配信を始め、累計約3億ダウンロードに達したスマホゲーム「スーパーマリオラン」はこれまでのマリオシリーズに比べて単純な操作に特化し、顧客の反応を見ながら遊びを加えたことを明らかにした。

 利用者がスマホゲームへ多額の課金をする問題については「(ゲーム開始時に支払う)買い切り型が定着すれば安心してゲームを作れる」と語った。マリオランが買い切り型を採用し、採算を取れていることを紹介した。

 一方、米アップルが2007年に初代「iPhone」を発売した際に、販売していたゲーム機「ニンテンドーDS」がスマホ同様にカメラやタッチ操作を採用していたことに触れた。「ネットワークにつなぐのが難しかった」とスマホの普及に負けた後悔の念を示した。(上田志晃)

[日経産業新聞 2018年8月24日付]

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