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サブカル 襖絵に挑む 「釣りバカ」「エヴァ」… 一休の大徳寺に(もっと関西)

カルチャー

とんち話で知られる一休さん。その一休禅師を開祖とする大徳寺真珠庵(あん)の襖(ふすま)絵に、漫画家の北見けんいちら6氏が挑んだ。真珠庵で9月1日から12月16日まで特別公開する。くつろぐ現代人や戦闘機なども交じる絵柄で、古刹らしからぬ異色ぶり。これも権威に背を向ける一休ゆずりの反骨精神か。

北見けんいちが制作した襖絵「楽園」(大徳寺真珠庵)

南の島、夕日が海に沈むころ。バンド演奏に合わせて歌う僧侶。輪になって踊る人々。杯を傾ける男、おしゃべりに夢中な女、食べ物をほお張る子供らが、明るい色彩で描かれている。

「あれこそ楽園」

23日に報道陣に公開した真珠庵の襖絵「楽園」だ。「釣りバカ日誌」でおなじみの漫画家・北見けんいちが制作。北見が鹿児島県与論島に持つ別荘で過ごすひとときを描いている。

依頼したのは山田宗正・真珠庵住職。北見と十数年来の付き合いという住職自身、繰り返し一緒に与論島を訪れている。「あれこそが楽園そのもの」と住職がかねて思っていた情景だ。

山田住職が真珠庵方丈の襖絵制作を依頼したとき、早とちりした北見は「(禅寺向きの)墨絵はどうも……」と尻込みしたという。

北見のほか、制作を手がけた顔ぶれが多彩だ。ゲーム「ファイナルファンタジー」のアートディレクターを務めた上国料勇。「新世紀エヴァンゲリオン」で知られるアニメ制作会社ガイナックス社長の山賀博之。アニメ「オトナの一休さん」のイラストレーター伊野孝行。真珠庵で修行経験もある画僧の濱地創宗。画家兼写真家の山口和也が仏間下の襖絵を手がけた。

伊野孝行「オトナの一休さん」

ネットで修繕費

新作を依頼したのは、重要文化財でもある襖絵の一部に亀裂が生じたため。襖絵は1491年曽我蛇足(じゃそく)と、1601年の長谷川等伯の制作で、その修復費用の足しにと、真珠庵では新たな襖絵を特別公開し、拝観料と併せてクラウドファンディングを募る計画だ。

最近は原本をデジタルで読み取らせて精巧に再現できる技術もあるが「襖絵に囲まれた寺はアートを濃密に体験できる特別な空間。せっかくの環境を生かすなら、複製より新たなものにした方が意義がある」と山田住職は狙いを語る。

それにしても、制作を依頼した先が漫画家や画業が本職でない人たちとは。

「サブカルチャーだからと低く見る人もいるが、ある意味、現代を代表する美術作家たち。世界にさえ通用する何かを持っており、伝統的権威より、発信力はむしろ高い」(山田住職)

見応えがあるのが、上国料勇と山賀博之の作品だろう。伝統に根ざす画題や技法に、あえて異質なモチーフを同居させている。

上国料勇「Purus Terrae 浄土」

上国料の「Purus Terrae 浄土」は中空に浮く観音立像の周囲に風神・雷神ほか、弦楽器を奏でる弁財天を配している。なじみ深い画題とはいえ、筆致は写実的で、背景や彩色の肌合いはむしろSF映画に近い。

山賀博之「かろうじて生きている」

山賀の「かろうじて生きている」も、水墨画という従来の技法に挑戦しながら、海面上に超常現象らしき円環が浮かび、戦闘機が上昇するなどシュルレアリズム的な作風だ。

濱地創宗「寒山拾得」

上国料、山賀の2人は、住職の弟子が東京で月に一度開く座禅会に参加していた関係で声をかけた。この2人に限らず、全員が無報酬という。

「今では名高い等伯も、能登半島から出てきた野心的な絵師にすぎなかった。京都の画壇に食い込むきっかけが、大徳寺に残した絵だったことを思えば、新たな襖絵の潮流がここから起きて不思議はない」(山田住職)。慣習にとらわれない風狂精神が、真珠庵には生きているようだ。

(編集委員 岡松卓也)

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