2018年11月16日(金)

人と働く「コーボット」開発相次ぐ 米欧新興勢が主役

CBインサイツ
米巨大ITへの逆風
スタートアップ
コラム(テクノロジー)
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2018/8/27 2:00
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機械学習を搭載したツールが使いやすくなったため、スタートアップ各社はロボットの新しい波を支えるコンピュータービジョンの開発に取り組んでいる。

下の写真は産業用の「ピック・アンド・ソート(つかんで仕分けする)」機能のビジョンの仕組みを示した米Veo Robotics(ベオ・ロボティクス、左)と米Osaro(オサロ、右)の実演風景だ。米Rethink Robotics(リシンク・ロボティクス)の元社員が創業したベオは人間を感知できる目を持つことで、「スマートではない」ロボットアームを改良しようとしている。

ピーター・ティール氏やエラッド・ジル氏、ショーン・パーカー氏など著名なエンジェル投資家が出資者に名を連ねるオサロは、医薬品産業や外食産業などで使われる視覚ソフトウエアの開発に取り組んでいる。

コーボットの視覚が進化すれば、導入も広がるだろう。安全性と能力が増せば、システムの需要は一段と増え、もっと多くのスタートアップがさらに進んだコンピュータービジョンを開発するようになる好循環を生む可能性が高まる。

■技巧の問題の克服

ロボットは当たり前の存在になりつつあるが、映画「スペースファミリー/ジェットソンズ」や「ターミネーター2」から期待するような知性や器用さはまだ持ち合わせていない。著名なロボット研究者ハンス・モラベック氏は「モラベックのパラドックス」と呼ばれるこんな見解を示している。

「コンピューターに知能テストで成人並みの成績を上げさせるのは比較的簡単だが、認知や移動に関しては1歳児のスキルを習得させるのも難しいか、不可能だ」

言い換えれば、高次の推論には計算はほとんど要らないが、感覚や運動能力には膨大な計算が必要になる、ということになる。

物体を器用に扱うのはロボットにとって大きなハードルだが、ハード面の進化に伴いコーボットの性能は向上している。

コーボットのハード機器の価格が下がり、性能も向上したため、スタートアップ各社はコンピュータービジョンの開発に専念し、特定のタスクに合ったソフトウエアをつくれるようになった。

コーボットメーカーの最大手はデンマークのUniversal Robots(ユニバーサルロボット、UR)で、同社は2015年に米Teradyne(テラダイン)に買収された。URのコーボットアームはスタートアップ各社に代わり骨の折れる仕事を担っている。

米Ready Robotics(レディー・ロボティクス)、米Fetch Robotics(フェッチ・ロボティクス)、米Voodoo Manufacturing(ブードゥー・マニュファクチャリング)などVCの支援を受けているスタートアップ企業はいずれも、URのコーボットアームを使ってシステムを構築している。レディー・ロボティクスは産業用の自動化タスクに特化した「ロボティクス・アズ・ア・サービス(RaaS)」を提供。フェッチのコーボットはネット通販の仕分け作業を担い、ブードゥーは複数の3Dプリンターを自動管理するためにコーボットを使っている。

URによると、一部のアームは平均195日の稼働で元が取れるという。

業界全体ではコーボットの平均価格は2万4000ドルで、市場規模は2020年には30億ドルになるとみられている。

URなどの既製コーボットアーム、スタートアップ企業に可能性をもたらす

URなどの既製コーボットアーム、スタートアップ企業に可能性をもたらす

器用になったとはいえ、「ユニバーサルなエンドエフェクター」、つまりどんな物体でも巧みに扱えるロボットハンドの開発は依然として難しい。

現時点では、ロボット「ハンド」は多目的の利用には適していない。だが各社は工夫を凝らし、様々な物体をつかめるエンドエフェクターの開発に取り組んでいる。

例えば、米Empire Robotics(エンパイア・ロボティクス)と米Soft Robotics(ソフト・ロボティクス)は、軟らかい素材や液体、もしくは空気圧を使ったソフトロボットの開発に特化している。ロボットの扱いはまだ完璧ではないため、ソフトロボットは無駄な力を加えて物体を潰さないようにする次善の策だ。グリップ部分は米食品医薬品局(FDA)から食品を扱う認可を受けており、現在は食品の包装に使われている。

それほどデリケートではない素材に対しては、米Grabit(グラブイット)は既存のロボットアームに熱接着を採用し、ハンガリーのOptoforce(オプトフォース)は用途を絞ったセンサーやツーリングを生産している。

「ユニバーサルなエンドエフェクター」を追求しているのはロボットメーカーだけではない。

米アマゾン・ドット・コムが最近取得した特許「Robotic Gripper with Digits Controlled By Shared Fluid Volume(液量の共有で制御する数字付きロボットグリッパー)」では、頑丈で重い物体も軟らかく軽い物体も扱えるロボット操縦機について詳述している。

現状では人間の器用さに遠く及ばないが、未来のコーボットには何でもスマートに扱えるエンドエフェクターが搭載されるだろう。

■既存のロボットメーカー、コーボットブームに出遅れ

産業用ロボットメーカー大手は、これまで解説したようなコーボット開発の新しい波に不意を突かれたようだ。

ファナックのある役員は「大手メーカーがこうしたロボットを使いたがるとは思わなかった。軽い物体しか持ち上げられず、機能も限られるからだ」と振り返る。

既存メーカーは今やテラダイン傘下のURに追い付こうと躍起になっている。スイスのABB、ファナック、安川電機、独クーカ、独ボッシュなど大手各社は、コーボット市場ではURの後じんを拝している。

遅れを取り戻そうと提携も相次いでいる。川崎重工業はライバルのABBと共同で、ロボットのプラグラミングの共通化に乗り出している。

大手ロボットメーカーもコーボットに参入

大手ロボットメーカーもコーボットに参入

コーボットの需要はなぜいきなり増えてきたのか。

主な理由の一つとして考えられるのは、世界各地で労働コストが上昇している点だ。経済成長に伴い、工業国の賃金は急上昇している。例えば、中国の平均賃金は06年以降で2倍以上に跳ね上がり、もはや低コストの工場とはみなされなくなった。

実際、中国の労働コストは非常に高いため、家電業界の雇用はベトナムなど低コストの近隣国に流出しつつあり、ロボットへの需要を昨年だけで20%以上押し上げている。

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