2018年9月21日(金)

人と働く「コーボット」開発相次ぐ 米欧新興勢が主役

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コラム(テクノロジー)
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2018/8/27 2:00
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 産業用ロボットといえば、一糸乱れない正確無比な動きでクルマや家電を組み立てる工場の風景を思い浮かべる人が多いだろう。人間に代わって単純で危険な作業を黙々と続けるロボットは、世界中の工場で広く使われている。だが今、注目されているのは決められた作業だけをこなすのではなく、もっと気の利いたロボだ。人と一緒に働く「コーボット」の開発が加速している。主役は従来の大手機械メーカーではなく米欧のスタートアップ企業だ。

ロボットアーム「ユニメート」

ロボットアーム「ユニメート」

 ガレージのドアの自動開閉機を発明したジョージ・デボル氏がロボットアーム「ユニメート」を売り出した当初、周囲の反応は芳しくなかった。だが「このロボットにはメリットがある。1日3シフト、つまり24時間働ける」と強調すると、状況は変わった。

 この初の産業用ロボットは、1960年代初めには米ゼネラル・モーターズ(GM)の工場で活躍した。

 それから50年。ロボットを巡る状況は大きく変わった。

 工場のロボットといえば、大きな柵で囲まれ人間の代わりに単調で危険な作業をこなすものとされてきた。だが現在では技術の進化で器用な小型ロボットが工場で使われるようになっている。

 軽く小さなロボットに人工知能(AI)やセンサーを搭載し、工場などで人間と協働できる「コーボット」が誕生したのだ。小さな物体をつかんだり、見たり、特異な状況で発生する事例(エッジケース)への対応を学んだりと、様々なタスクをこなせる。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

 コーボットは現時点では400億ドルの規模を誇る産業用ロボット市場のほんの一部にすぎない。だが、今後10年で100億ドル以上に拡大するとみられている。

 ロボット業界はこれまで、数々の問題に悪戦苦闘してきた。ざっと次の通りだろう。

・視覚の問題。ロボットが物や人を特定したり、避けて動いたりできる視覚技術はなかなか進展しなかった。そのためロボットを柵に入れて人間の周りで作業できないようにして人間を守ってきた。

・器用さの問題。物をつかむ能力はまだ限定的だ。

・投下資本利益率(ROI)の低さ。労働コストが安いため農業や製造業などの分野ではロボットの必要性がなかなか高まらなかった。

 この記事では、企業がコーボットでこうした技術的な問題にどう対処し始めているのか、さらにコーボットの登場で製造業やネット通販、農業、外食産業にどんな変化が起きているのか調べる。

■コーボットは新しい視覚技術をどれほど生かせているか

 ロボットが世界各地の工場に普及したのを受け、物を認識し安全に避けて動けるようにする「ビジョンシステム」という考え方が生まれた。

 これまで安全策といえば人間が危険なほどロボットに近づかないよう柵で囲むのが定番だった。だが、状況は変わりつつある。

 ここ数年で、ライダーなど視覚機能を持つ機器の価格が大幅に下がって性能が向上し、普及が進んだ。その結果、センサーを搭載し、視覚機能を持つコーボットの開発に取り組むスタートアップ企業が相次いでいる。

 コーボットは1996年ごろに考案された。形や大きさは様々で、人間が働く職場を念頭に置いて設計されている。プログラムの変更が容易だが、ローテクの産業ロボットのようなパワーはない。

 3Dプリンターの補助や医療機器の生産、倉庫での注文品の取り出しなど、高度な認知機能を求められるタスクを完了するなど、人間がなお介在している小規模工場での作業に適しているようだ。

 もちろん、ロボットの視覚機能にはなお改善の余地がある。

 今年1月、米ラスベガスで開かれた家電見本市「CES」で卓球ロボットを実演したオムロンの竹内勝氏は、英フィナンシャル・タイムズ紙に対し「ロボットは物体をつかんで素早く動かすことはできる。だが、それが何で、どう動かせばよいのかを判断するのはまだ難しい」と語っている。

■コーボットの現状

 ロボットに物の位置を把握させ、うまく扱うよう教えるのは至難の業だ。だが、米グーグル傘下の英DeepMind(ディープマインド)と米カリフォルニア大学バークレー校による数々の研究の進展で、コーボットが大量の訓練データがなくても一目見ただけで新たな物を認識できるようになったことが示された。

 未来のロボットは人間を一度観察しただけでタスクを習得したり、仮想現実(VR)のジェスチャーコントロール機能(米Covariant.ai〈コーバリアントAI〉が開発した手法)を使ってプログラムできたりするようになるかもしれない。

 このテクノロジーはまだ開発途上だが、現行システムは既にロボットが人間と協働できる水準に達している。コーボットアームやその親戚にあたる車輪付きの自動搬送車(AGV)は、製造業や倉庫などで当たり前の存在になっている。

ロボットの形や大きさ、知性は様々

ロボットの形や大きさ、知性は様々

 ロボットは反復的で予測可能なことなら、やすやすとこなせる。一方、ランダムな組み合わせからアイテムを選び出すような作業では、アルゴリズムで特殊な処理が必要となる状況がはるかに増える。人間との真の協働には、AGVが自発的に人間を「見て」、それに応じて行動することが必要だ。

 こうしたエッジケースを処理するアルゴリズムの開発は、AIやコンピュータービジョン、自動運転車の研究にも役立つ。AIと機械学習では、9割の状況に対する反応を自動化するのは易しいが、残りの1割が極めて難しい。米ベンチャーキャピタル(VC)、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のベネディクト・エバンス氏は、機械学習は「これまで『人間にとっては簡単だが、コンピューターには難しかった』ような問題、つまり『人間がコンピューターに説明しにくい』類の問題(に対処している)」と指摘する。

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