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孫悟空とトランプ(大機小機)

2018/8/22 18:04
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トランプ米大統領は貿易赤字(経常赤字)の削減に躍起である。だが、その試みは失敗するだろう。貿易赤字はもっと別のところで決まっているからだ。

貿易(経常)収支は、中長期的にはその国の総貯蓄と国内投資の差額に等しくなる。経済理論の基本だ。因果関係は単純ではないが、貯蓄が投資を上回れば、その超過分が貿易黒字として表れる。投資が貯蓄を上回れば、その分赤字となる。

貯蓄や投資額が動かなければ貿易収支も変わりにくい。貯蓄率や投資比率は長期的にはその国の制度や慣行、潜在成長率などに左右される。完全雇用なら供給制約で国内総生産や貯蓄は動きにくい。つまり、輸出や輸入額が多少変動しただけでは、簡単には貯蓄や投資がそれに見合う水準に変化しない。貿易収支も元の水準に戻ることになる。

例えばトランプ大統領が赤字を減らそうと自動車の対日輸入関税を引き上げる。日本からの自動車の輸入はひとまず減るだろう。しかし、減ると消費者が困る。米国内生産に切り替えようとしても生産体制はすぐには整わない。他の国からの輸入に頼らざるを得ず、赤字全体は減らない。

国内生産に切り替えられたとしても、米国全体の生産資源量は限られている。自動車生産に集中すれば、ほかの商品の生産は減る。輸出余力は低下し、新たな赤字要因となる。

しかも、トランプ大統領は経済活性化を狙い大胆な法人税減税を実施した。向こう10年で1.5兆ドル(160兆円)のインフラ投資もするという。財政赤字拡大・投資拡大策である。貿易赤字縮小とは逆行、論理的整合性はゼロである。

頼るのはいつも直感であり、目に見えぬ論理に思いは及ばない。

ノーベル経済学賞受賞者P・クルーグマン氏は「彼は純粋に無知なのだ」と酷評する。サマーズ元米財務長官は「呪術経済学よりひどい」と批判する。マンキュー米ハーバード大教授は「彼を学問的成果で説得できるとは思えない」とあきらめ気味だ。

孫悟空とお釈迦様――。めったやたらに如意棒を振り回した孫悟空はしばしば喝さいを浴びた。だが結局は、お釈迦様の手のひらの上で、やった気になっているだけだった。トランプ氏はどこか孫悟空に似てはいないだろうか。

(横ヤリ)

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