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バルサのピケが主導 大胆なテニスのデ杯改革

テニスの国別対抗戦デビス杯が2019年から大きく生まれ変わる。サッカー・スペイン代表のジェラール・ピケ(バルセロナ)による「25年総額30億ドル(約3300億円)」の大型投資を含む大胆なデ杯改革案を、国際テニス連盟(ITF)が承認し、これまでと違うスキームで新しい一歩を踏み出す。

「デ杯が長期的に安定する道を確保できてうれしい。歴史的な決断を次世代につなげていきたい」。ITFのデビッド・ハガティ会長は16日、米フロリダ州で行われた年次総会で71.4%の賛同を得て改革案が承認されると、満面の笑みで話した。それほどデ杯改革は長年の懸案だった。

バルセロナでプレーするピケ(右)。デ杯の改革を主導した=ロイター

「年4週開催」「開催は対戦する一方の国・地域で行う」「5セットマッチの3戦先勝」――。これが1世紀以上の歴史を持つデ杯の開催方式だった。しかし、男子ツアーを統括する団体、ATPが発足して半世紀近くたち、選手たちの試合日程が過密になった。このため体力的にも負担が大きいデ杯に、トップ選手が出場しなくなっていた。ロジャー・フェデラーもスタン・バブリンカも出場せず、スイス代表が世界ランキング3桁の選手を中心に構成されることも珍しくなかった。

「信じがたいほど赤字のカードも」

対戦相手が決まらないことには開催場所を設定できないのに、デ杯の対戦カードが決まるのは試合の半年前~2カ月前というケースも珍しくない。準備期間が2カ月しかなく、どの選手が出場するのかも直前まで決まらないのでは集客やスポンサー集めにも大きく影響する。「デ杯開催自体が負担になる国が多かった。(収支が)信じがたいほどの赤字になる対戦カードもあった」と、日本テニス協会常務理事でITF五輪委員の川廷尚弘さんは話す。デ杯はITFの収入源であり、改革の必要性は20年近く議題に上っていたが、守旧派も多く、遅々として改革は進まなかった。

8月、デ杯準々決勝でドイツに勝利したスペイン代表チーム=ロイター

そこに目をつけたのがテニス好きのピケだった。三木谷浩史氏が会長兼社長を務める楽天の協力を得て投資ファンド「Kosmos」を立ち上げ、自ら会長に就いていた。その投資先として2017年、白羽の矢を立てた。友人のテニス選手に話を聞いてデ杯改革の素案を作成。ITF、ATPのトップに売り込んだ。

その骨子は(1)2月の予選ラウンドと、18チームが出場する決勝ラウンドの年2回のみ開催(2)決勝ラウンドは1都市に全18チームが集まって戦う(3)3セットマッチの2戦先勝(4)四大大会並みの賞金にする――というものだった。

改革案に抵抗、伝統国ほど強く

18年2月に改革案が正式に発表されると、ラファエル・ナダル(スペイン)、アンディ・マリー(英国)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)らトップ選手は賛意を表明した。しかし、票を投じるのは選手でなく、各国・地域のテニス協会だ。これまでの方式とは大きく異なる改革案への抵抗は伝統国ほど強かった。

伝統あるデ杯の優勝トロフィー=ロイター

210カ国・地域が加盟するITFが複雑なのは1カ国・地域の投票権が1票でないこと。四大大会開催国(オーストラリア、フランス、英国、米国)に加え、ドイツがそれぞれ最多の12票を持つ。日本を含む14カ国が9票で続き、以下は7票、5票、3票。80カ国・地域以上が1票で、63カ国・地域には投票権がない。12票持つ国のうち英国、ドイツ、オーストラリアが改革案に反対し、9票を持つ国の中にも反対意見は少なくなかった。

ただ、デ杯開催が負担でしかなかった多くの国がここぞとばかりに、ピケによる大型投資を含む提案に反応した。ピケも熱心に改革案の意義をITFの会合で何度も説明した。サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会の決勝トーナメント1回戦で敗れると、ロンドンで行われていたITFの会議の場に直行。8月には米IT(情報技術)大手のオラクル会長、ラリー・エリソン氏からの投資も取り付け、デ杯改革に必要な3分の2以上の賛同を得た。

「デ杯が最高レベルのプロスポーツに見合う場になるための第一歩」と大喜びのピケ。同じく苦戦する女子テニスの国別対抗戦フェド杯も、20年から同様の形式を採用する方針だ。

「チームで戦うのは選手たちも意外に好きだけれど、現在のデ杯は時代にそぐわなくなっていた。(この改革は)久しぶりに夢のある話」と、賛成票を投じた日本協会の川廷さん。「新生・デ杯」は19年11月18~24日、スペイン・マドリードかフランス・リールでデビューする。持ち回りで世界各地で開催する予定で、いつか日本にもテニスのスター選手が勢ぞろいする日がやってくるかもしれない。

(原真子)

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