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汚職まみれのトランプ政権(The Economist)

The Economist

トランプ氏は米大統領選挙中、「(ワシントンの腐敗した)沼を一掃する」と約束し、米国民のための政府をつくると誓った。だがトランプ政権は、信じがたい悪臭を放っている。ポール・マナフォート元選対会長は、沼にすむ生物から作られたジャケットを着ているほどだ。同氏は金融詐欺や資金洗浄など32件の罪状で起訴されており、裁判に証拠として出された高級品の一つが、1万8500ドル(約204万円)もするニシキヘビの革のジャケットだ。同じく同氏が購入したダチョウ革コートの倍近くするが、服やじゅうたん、造園工事などに投じた額のほんの一部でしかない。どれも外国政府からロビー活動を請け負って得た資金で購入したものだ。

マナフォート元選対会長(写真左上)、ロス商務長官(同右上)、プルイット元EPA長官(同左下)=いずれもロイター=、プライス元厚生長官(同右下、AP)とカネ絡みのスキャンダルが後を絶たない

検察は、マナフォート氏が税負担を抑えるため収入を1650万ドル過少申告したほか、2000万ドルの銀行融資を不正に受けていたと主張している(同氏は外国の銀行に31の口座を持つが、いずれも要求額を融資したがらなかったか、それが不可能だったようだ)。検察が出した証拠によると、同氏はある銀行員にホワイトハウスでポストを用意するとちらつかせて融資を得ようとしたという。マナフォート氏の弁護団はこれに対し、同氏が共和党員であることを強調した。トランプ氏は検察の一連の捜査は「完全な魔女狩り」と批判しており、陪審員が共和党への忠誠心からトランプ氏の見方に賛同するのを期待したのだろう。

マナフォート氏の件は極端だが、大統領の元個人弁護士マイケル・コーエン氏も詐欺容疑で捜査されている。2人はホワイトハウスに勤務したことはないが、カネ絡みのスキャンダルにつきまとわれているトランプ政権関係者は多い。プライス元厚生長官とプルイット元環境保護局(EPA)長官は、倫理的問題から退任を余儀なくされた(前者はプライベートジェットや軍用機の利用に100万ドル以上の税金を使い、後者にかけられた違反行為の疑惑は多すぎて書けない)。政権の他の高官も、似た疑惑で徐々に追い詰められている。民主党は、トランプ政権の倫理を巡る問題は共和党議員にも責任があり、秋の中間選挙でその代償を払うべきだと有権者を説得しようとしている。だがそれは、民主党が期待しているより難しいかもしれない。

標的は確かにいくらでもいる。選挙候補者や官僚の倫理問題を扱う無党派の監視機関「キャンペーン・リーガル・センター(CLC)」は13日、ロス商務長官に関する詳細に及ぶ問題点を提出し、商務省の監察総監に同氏を捜査するよう要請した。それによると、ロス氏は完全に開示していない所有株やその他の権益に影響した可能性のある政策の判断に関与したという。本人は個人弁護士を通し、不正疑惑を否定している。

通常なら注目集めるスキャンダルが大量に

独立機関である米政府倫理局(OGE)は、ロス氏が売却すると約束していた株を空売りしていたほか、「証言が省略されたり不正確だったりする」として、倫理契約に違反していると既に指摘。サウスダコタ州選出のジョン・スーン共和党上院議員は民主党議員らと共に、ロス氏の資産調査を呼びかけている。ロス氏は7月、「倫理契約で義務付けられている資産売却を不注意で完了していなかった」と認め、株式を売り、その売却代金で米国債を買うと約束した。同氏は以前、ロシアのプーチン大統領の義理の息子が関与しているロシアの船舶会社への投資を隠していたとの疑惑もかけられている。

8日には、ニューヨーク州選出のクリス・コリンズ下院議員が逮捕された。同氏は、2016年の大統領選で最も早くトランプ氏への支持を表明した議員だ。連邦検察当局によると、同氏が取締役を務め、大株主の一人でもあるバイオ企業が治験に失敗したことを息子にひそかに知らせたという。同じく起訴された息子は、所有する同社の株を売却した上で、別の4人にその情報を与えたとされる。親子は2人とも無罪を主張しているが、コリンズ氏は再選に向けた活動を停止し、出馬の取り下げに動いている。

他にも、通常ならもっと注目を集めるはずの小さなスキャンダルが大量の雑音のように鳴り響いている。ブレンダ・フィッツジェラルド氏は、たばこ会社の株取引をしていたことが発覚し、1月末に疾病対策センター(CDC)所長を辞任。カーソン住宅都市開発長官は、自分のオフィス用に公費で3万ドル強のダイニングセットを購入していたことが判明している。

ジンキ内務長官は、公費でプライベートジェットに乗り、モンタナ州の銃器メーカーの株を保有していたことを開示せず、同社の幹部やロビイストと会合していた。内務省の報道官によると、株の所有は開示義務が生じる基準額を下回っており、会合は表敬訪問にすぎなかったという。一般客と飛行機に乗りたくないという政府関係者は後を絶たず、ムニューシン財務長官は昨年、軍用機を8回使い100万ドル近い税金を費やした。

さらに各省庁でポストを得たトランプ家の取り巻きがいる。大統領の次男エリック氏の結婚式のプランナーだった人物は現在、住宅都市開発省のニューヨーク事務所の責任者だ。非営利の調査報道機関「プロパブリカ」は7日、大統領がフロリダ州に所有する高級会員制別荘「マール・ア・ラーゴ」の会員3人が、退役軍人省で過度の影響力を行使していると報じた。3人とも、政府と軍のどちらにも勤務した経験がないという。

有権者が気になるのは汚職より関税

トランプ氏自身にも様々な利益相反疑惑がある。民主党は、06年の中間選挙で効果抜群だった「腐敗の文化」という言葉を再び持ち出している。当時、ハリケーン・カトリーナへの連邦政府の対応を指揮するため大統領に任命された人物が、世界アラブ馬機構の会長職の他にたいした経歴を持たないことが判明し、ブッシュ(子)政権はぐらついた。同じ頃、共和党のロビイスト、ジャック・エイブラモフ氏の資金スキャンダルも発覚した。マナフォート氏の悪巧みと似た事件だ。民主党は、現政権の倫理問題を糾弾し、トランプ氏がさらうはずだった沼を共和党の面々がのんきに泳いでいるという構図と結び付けようとしている。

だが例えばアーカンソー州の有権者が、名前を聞いたこともないニューヨーク選出の下院議員や、役割がよく分からない省庁の閣僚の倫理問題に関心を持ち、支持していた共和党候補から対抗馬へ乗り換えるとは考えにくい。評論家のジム・フグリー氏は、中間選挙で接戦となりそうなノースダコタ州で、トランプ政権のスキャンダルが論点になっているかとの質問に対し、むしろ有権者が気にしているのは関税の問題だと答えた。かつてノースダコタ州の民主党組織の幹部だった同氏は、同州の選挙は「大豆の価格に左右され、1ブッシェル6ドルなら(民主党の現職)ハイジ・ハイトカンプ氏が勝つ」と予想する。アイオワ州の政治に関するブログ「ブリーディング・ハートランド」を執筆するローラ・ベリン氏は、トランプ政権の倫理問題は「主に活動家向けの話で、世間一般は関心がない」と話す。

トランプ政権があまりにスキャンダルまみれなため、個々の微罪はありふれた話にみえるのかもしれない。首席戦略官を解任されたスティーブン・バノン氏が、勝利する方法は「メディアにクソみたいにネタを流しまくること」だと発言していたのは有名だ。つまり、何が問題の本質なのかを誰にも考える余裕を与えないほど次々ニュースを流して圧倒してしまえばいいという発想だ。フグリー氏は「我々政治の専門家も、一般市民と同様に『またトランプがすごいことを言っている』とあきれているだけなのかもしれない」と語る。

(c)2018 The Economist Newspaper Limited. Aug. 18, 2018 all rights reserved.

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