2019年1月23日(水)

ギリシャ、自立へ一歩 EUの金融支援が終了

2018/8/20 19:40
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【アテネ=佐野彰洋、ブリュッセル=森本学】欧州債務危機の震源地となったギリシャは20日、8年に及ぶ欧州連合(EU)の金融支援から脱却した。ギリシャは自立に向け国債市場に本格復帰し、安定発行という課題に向き合う。一方、単一通貨ユーロの改革は財政統合や共通予算の導入を巡り停滞、危機の再発防止に不安を残す。

多くの「反緊縮」デモの会場だった議会前のシンタグマ広場は閑散としていた(20日朝、アテネ中心部)

多くの「反緊縮」デモの会場だった議会前のシンタグマ広場は閑散としていた(20日朝、アテネ中心部)

「生活が良くなる見通しがない。何も変わらない」。20日朝、アテネ中心部の議会前。5年前の失業を機に清掃の仕事を続けるユージニアさん(49)はこぼした。週5日1日12時間働くが月給は400ユーロ(約5万円)にすぎない。

ギリシャは2009年に財政粉飾が発覚し、世界の金融市場を揺さぶった。10年から3次にわたった支援の融資総額は国際通貨基金(IMF)拠出分を加えると約2900億ユーロに達した。

年金削減や増税などの緊縮策によって、ギリシャは財政黒字化を達成、17年には3年ぶりにプラス成長に転換した。だが、国内総生産(GDP)は危機前に比べ約4分の3の規模に縮小した。

ギリシャは今後、債務の借り換えなど財政運営に必要な資金を国債市場から直接調達する。しかし金利はユーロ圏の低利融資を上回り、19年9月に任期満了が迫るチプラス政権も有権者受けを狙ったばらまき策の誘惑がつきまとう。国債の安定発行は容易ではないのが実情だ。四半期ごとに財政規律の順守を点検・監視するEUやIMFとの衝突懸念も拭えない。

それでも「グレグジット」(ギリシャのEU離脱)まで取り沙汰されたギリシャ危機だったが、ユーロはひとまず生き延びた。ユーロ圏は危機時に加盟国を支援する常設基金「欧州安定メカニズム(ESM)」を創設。EU基本条約(リスボン条約)上は禁じていた加盟国への財政援助・金融支援に道を開き、危機時の耐性を強化。圏内でバラバラだった金融機関の監督なども一元化した。

しかし、ギリシャ危機を結束して乗り切ったものの、平時から危機を予防するユーロ改革は道半ばだ。最たるものが「通貨はひとつだが、財政はバラバラ」という根本問題への対応。ユーロ圏の共通予算編成などを通じて、ドイツなど豊かな北部欧州から南欧への財政資金を移転する必要性が指摘されながらも、南欧のモラルハザードにつながるとの北部の懸念が強く、実現は遠い。

ユーロ圏各国でも広がるポピュリズム(大衆迎合主義)の内向き姿勢もユーロ改革をさらに難しくしている。イタリアではポピュリズム政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」の連立政権がギリシャ危機の反省で強化されたEUの財政規律ルールに反発。財政を巡る南北対立が再び深まる懸念が強まり、次の危機に結束した対応が取れるかどうかは不透明だ。

19年で退任するユンケル委員長をトップとするEUの欧州委員会は現体制下での抜本的ユーロ改革を実質的に断念した。

欧州が懸念するのはギリシャだけではない。米国との対立を端緒に通貨が急落したトルコの動きに神経をとがらせる。ギリシャの公的債務残高は17年末時点でGDP比約179%に達するのに対し、約28%のトルコ政府は財政体質は健全とみられるが、政権の強権化や中銀への圧力が通貨の信認低下を招いている。

トルコで懸念されているのは、外貨建て債務負担の増大に苦しむ企業の破綻が相次ぎ、影響が銀行部門に及ぶ事態だ。トルコには欧州の主要行も進出している。ギリシャとは異なる種類の金融危機が欧州を襲う可能性は消えていない。

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