「米国のスポーツ界で最も成功したアジアの投資家」と呼ばれる人物がいる。不動産投資で財をなした後、大リーグ球団のオーナーや、競技団体のトップを歴任するウィル・チャンさん。実は、日本とも深い縁を持っている。
7月、米国で一つのスポーツイベントが話題になった。サンフランシスコで開かれた7人制ラグビーのワールドカップ(W杯)。同国ではまだ人気が確立していない競技の大会が、3日間全てほぼ大入り。観客は計10万人に達した。無料放送のテレビ局で全国に中継されるなど記録的な成功となった。
7人制ラグビーW杯を米国に招致したウィル・チャンさん
大会2日目に行われた女子の米国―ニュージーランド戦。「USA」コールで沸く客席を最上階から眺めながら、「最高の雰囲気だろ?」と笑っていたのがチャンさん。5月まで米国ラグビー協会のチェアマンを務め、W杯を招致。狙い通りの結果に導いた主役である。
この大会、もう一つの「初めて」があった。会場となったのは大リーグ・ジャイアンツの本拠地、AT&Tパーク。野球場でW杯が開かれることもこれまでになかった。
■球団関係者からは不平も
ジャイアンツが遠征で球場を留守にしている間、ラグビーに間借りさせたというレベルではない。至れり尽くせりで賓客をもてなしたといった方がふさわしい。
たとえば、大リーグの昨オフには全ての芝が張り替えられた。新しい芝はラグビー用の長くて根付きのいいタイプ。激しいラグビーの試合でも、はがれにくくするためだ。
左翼フェンスも昨年より約1メートル後退させた。こちらもラグビーのピッチをつくるときに縦の長さを十分確保するため。しかも、数百万ドルの費用を出したのは球場側だ。
球団関係者からはラグビーを優遇しすぎという不平も出た。選手からは「芝が長くてボールの転がりが悪い」という声も。しかし、「ファンにとってはここでやるのが一番いい。反対は出たけれど押し切った」とチャンさん。それが可能だったのは、自らがジャイアンツのオーナーも務めるからだ。
1956年、日本人の母と中国人の父の間に、大阪で生を受けた。14歳まで神戸で暮らした後、英国へ留学。米ハーバード大を経て、不動産会社やIT(情報技術)関連の投資で成功。次の出資先の一つとしてスポーツに目を付けた。
数ある候補の中でジャイアンツを選んだのには理由がある。少年時代はプロ野球の長嶋茂雄、王貞治の活躍に胸躍らせる巨人ファン。米国に渡ってもその思いは消えていなかった。「こっちにもジャイアンツってあるじゃないかって」
2004年、球団の株式を取得し、共同オーナーの一人になった。米誌フォーブスによると、当時の球団の資産価値は推定3億6800万ドル(410億円)だから、出した資金は相当な額になる。
ラグビーの全国大学選手権で10年ぶりに新しい王者が誕生した。帝京大の連覇は9でストップ。天理大との決勝を制した明大が22年ぶりに優勝した。時代の節目となった王座交代を、一つの切り口から見てみたい。
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五輪とサッカーワールドカップ(W杯)に次ぐスポーツイベントであるラグビーW杯が9月、初めて日本で開かれる。日本代表は前回大会で南アフリカから「史上最大の番狂わせ」と呼ばれる金星を挙げたが、今回は4年
ラグビーW杯は4年に1度、20チームが参加して世界一を決める大会。総観客数などから夏季五輪、サッカーW杯に次ぐ「世界で3番目のスポーツ大会」と呼ばれる。
アジアで初開催となる2019年日本大会は9月