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独ボッシュVSパナソニック 「eバイク」日本で激突

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

ヤマハ発動機が世界初の電動アシスト自転車を発売して11月で25周年。拡大する日本の市場に新たなうねりが押し寄せようとしている。「eバイク」と呼ぶスポーツタイプでドイツのボッシュが参入。パナソニックなどが応戦する。eバイクの陣取り合戦は、多様なモビリティー(移動手段)が求められる時代に足場を築こうとする動きの表れでもある。

日本でクロスカントリーのレース

6月に開かれた日本初の本格的な電動自転車のレース(長野県大町市)

6月9日、長野県大町市で催された日本最大級のオートバイのクロスカントリー選手権で、初めて電動自転車のレースが開かれた。約20台のマウンテンバイクが急勾配の坂道を疾走。ヤマハ発などの日本のブランドに交じって、ボッシュの電動システムを載せた外国ブランド車が活躍した。

そのボッシュは今春、日本の電動自転車市場に参入した。日本で売られている「ビアンキ」や「コラテック」など欧米の4つのスポーツ車ブランドに電動アシストシステム「eバイクシステム」を供給した。

システムは電池と駆動ユニット、速度や電池残量を示すモニター、充電器で構成する。自転車の中心価格帯は20万~30万円。春に売り出した初回分が完売し、今夏には米「エレクトラ」にも日本でシステムの供給を始めた。日本ブランドに供給先を広げる計画もある。

ボッシュは欧州での実績をもとに電池や駆動ユニットを一括供給する

ボッシュはドイツやオランダの都市部を中心に欧州で普及する電動のスポーツ自転車「eバイク」の火付け役だ。2010年から電動アシストシステムの展開を始め、今やOEM(相手先ブランドによる生産)の供給先はマウンテンバイクを中心に70ブランドに達する。電動スポーツ車は主に休日に乗る中高年の男性に広がり、日常の足にも使われるようになった。

8割は「ママチャリ」

実は電動自転車は日本でも成長市場だ。17年の日本メーカーの出荷販売台数は62万台と08年の2.2倍。完成車全体が54%も減ったのとは対照的だ。電動自転車は子連れの主婦や高齢者の街乗りで普及し、欧州とは違って出荷の約8割を「ママチャリ」と呼ぶ軽快車が占める。

電池の容量はヤマハ発が初代「PAS」を発売した25年前の3倍以上、航続距離は約5倍になった一方、重さは半分以下に。車両価格は10万円前後するが、それでも25年で3割近く下がり、アシストなしの従来タイプからの切り替えが進む。運転免許が不要なため、原動機付き二輪車からの移行も多い。

アジア圏の事業を統括するボッシュのデイブ・ハワード氏は「日本では個性的な製品に関心を持つ若年層が増えたが、電動自転車には似たような製品しかなかった」と日本参入の理由を話す。

日本でも20~50代の男性が休日の体力づくりや平日の通勤で高額のスポーツ自転車に乗るようになっている。より長い航続距離と軽さが求められるスポーツ車にも載せられるほど電池の性能が上がるなか、電動タイプを投入すればスポーツ車に乗る層の裾野が広がり、欧州と同様の地位を築けると判断した。

ボッシュは自転車のフレームに埋め込める新型の電池ユニットやマウンテンバイク用の高駆動ユニットなどの日本投入を検討。ハワード氏は「日本の電動スポーツ自転車の出荷で2桁のシェアを狙う」という。

日本メーカー初のマウンテンバイク

受けて立つのが、日本の電動自転車の出荷台数で4割を占める首位のパナソニック。同社は電動アシストシステムから車体まですべて自社で生産している。

パナソニックは6月、兵庫県の丹波篠山で電動マウンテンバイクのツアーを主催した

自転車事業の子会社、パナソニックサイクルテックは17年9月、日本メーカーで初となる電動のマウンテンバイク「XM1」を発売した。車体と一体になる細長い電池を開発。前輪にサスペンションを付け、凸凹の多い道での衝撃を吸収する。200台の初年度の販売目標に対し、7月末までに約500台を売った。7月には電池の容量と変速数を増やした上位機種「XM2」を発売した。

軽快車の「ビビ」シリーズだけで年間出荷の半分以上を占めるなど、同社の電動自転車の主な購買層は街乗りに使う高齢者や主婦。同社は国内の電動自転車の出荷のうちスポーツタイプはまだ数%だが、健康意識の高まりなどで20年には10%に伸びるとみている。

片山栄一社長は「『スポーツのパナソニック』を定着させることはグループのブランド戦略でも大きな意味がある。欧州のようにスポーツ車を文化として根付かせたい」と話す。6月には自転車を供給し、兵庫県北部の丹波篠山で電動マウンテンバイクのツアーを主催。指導員のもと、6人の中高年男性が約40キロメートルの田舎道や山道を駆け回った。観光地での電動自転車のシェアサービスなど、製品面以外の取り組みも進める。

ヤマハ発は米国に進出

ボッシュとパナソニックの動きが急になるなか、電動自転車の元祖、ヤマハ発も今年に入ってスポーツ車への対応を加速した。6~7月、PASに比べて軽くスポーティーな走りのブランド「YPJ」で本格的なオフロードモデルなど4種の新型車を発売。初のマウンテンバイク型では電池の容量を従来品の約8倍まで増やした。

ヤマハ発の視線は米国にも向いている。6月、YPJで4モデルを米国で売り出した。国土の広い米国は一部の都市でしか移動手段として自転車が広がっておらず、「まだ電動自転車の文化が欧州ほど根付いていない」(鹿嶋泰広マーケティンググループリーダー)。草分けとしてあえて未開の地に挑む。

eバイクを日本に持ち込むボッシュ。自動車部品の世界最大手だが、自転車のサービス事業にも力を入れている。

自転車サービス会社を買収

17年には電動自転車のコネクテッド(つながる)技術を開発するドイツのスタートアップ、COBI(フランクフルト)を買収。同社はスマートフォンを通じて様々な情報を乗り手に伝えるサービスを提供しており、アジア統括のデイブ・ハワード氏は「日本でも市場調査を始める」と話す。

都市部を中心に世界の消費者が自動車の所有を敬遠するようになっている。時代の変化を受け、ボッシュはモビリティー全般の電動化とサービスを軸に事業を強化している。中国では電車制御ユニットやモーターなどで構成する電動スクーター用のシステム「eスクーター」を販売し、同国での普及につなげた。ベルリンやパリでは電気スクーターのシェアサービスを運営している。日本の電動自転車市場への進出もこうした全社戦略の一環といえる。

消費者が自動車の所有から遠ざかっているのは地球環境保全への意識や健康志向の高まり、渋滞問題など様々な事情が重なっている。米サンフランシスコでは電動キックスケーターのシェアサービスが一時、急速に広がるなど、電動で手軽に移動できる乗り物への潜在需要は大きい。米西海岸では米フォード・モーターが自転車シェアサービスに参加している。電動自転車の事業そのものの収益は小さいが、消費者をつなぎ留める存在感は決して小さくない。

(企業報道部 山本夏樹、大阪経済部 上田志晃)

[日経産業新聞 2018年8月17日付]

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