人手不足の工事現場 ICTで脱3K
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2018/8/19 15:02
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 汚い、きつい、危険の「3K」職場と言われてきた建設現場が様変わりしつつある。レーザーを使った測量、あらかじめ入力したデータで制御された重機……。情報通信技術(ICT)の導入が工事の効率と安全性を高めているという。実際の作業はどんなふうに進むのか。公共工事の現場に行ってみた。(定方美緒)

堤防工事でGPSを使い、踏み固めた位置と回数を確認する作業員(6月、さいたま市桜区)

堤防工事でGPSを使い、踏み固めた位置と回数を確認する作業員(6月、さいたま市桜区)

さいたま市桜区で国土交通省の荒川上流河川事務所が発注した荒川堤防工事が進む。長さ470メートル高さ11メートルの大堤防になる計画だ。

7月中旬の暑い日、フタバコンサルタント(福島県いわき市)の四倉星士さん(35)が三脚に載ったデジタルカメラのような装置を動かしていた。盛り土工事が正しく施工されたかの確認作業。

地形を読み取る「レーザースキャナー」は半径50メートルの範囲の地形データを3次元で一度に取得できる。所要時間は約20分。「これまでだったら1週間程度かかっていた測量も、今は2日間で可能だ」(四倉さん)

スキャンしたデータはパソコンに移し、1立方メートルごとのマス目で区分された3次元の設計図と重ね合わせる。マス目が赤色で表示されれば、設計より高く、青色だと低い。地点ごとに異なるが、最大で約15センチのずれがあれば不合格。この日確認した場所は全て合格だった。

誤差の少ない工事を可能にしているのがICTを取り入れた重機。施工前の地形と設計データをあらかじめパソコンで照合し、地点ごとに必要な盛り土の高さなどを重機のコンピューターに入力しておく。全地球測位システム(GPS)の情報で重機は自分で位置を把握しながら動けるという。

「どこを通ったかは覚えられない。モニターがなければ分からなくなってしまうよ」。轟音(ごうおん)を上げるブルドーザーで盛り土を締め固める作業をしていた、庄子信幸さん(52)はICTの威力を実感する。

レーザースキャナーを活用することで、測量時間を大幅に短縮できる(7月、さいたま市)

レーザースキャナーを活用することで、測量時間を大幅に短縮できる(7月、さいたま市)

操縦席のモニターは締め固める区間を1回通過するごとに色が変わり、通過していない場所がないかを一目で把握できる。地面に当たる排土板の位置は事前に入力されたデータに基づいて自動制御されており、運転者が調整する必要はない。

油圧ショベルでのり面を整形するバックホーは誤った角度でショベルを操作しようとすると、動作しなくなる。

施工にあたる初雁興業の藤田浩一マネージャー(45)は「これまでは重機のそばで、補助要員が目測で角度などを指示する必要があり、危険な作業だった」。ICT重機の導入は人員と危険を同時に減らすことにつながるという。

国交省が2017年度の国発注工事を対象にした調査では、ICT重機を導入した71社で作業時間が従来型の施工方法に比べて平均26%減っていた。ただ「現状では機材が高価で人件費の削減分を上回ってしまう」(技術調査課)。同省は機材のレンタル代を支援するなどして普及を図る。

「ICTの本格的な導入・普及で建設現場を技術集約型の最先端の工場へ転換できる」。国の有識者委員会の報告書にこんな文言を見つけた。建設現場の人手不足はとりわけ深刻とされる。先端技術の導入は一つの解決策にはなりそうだ。

◇  ◇

■大量離職が間近 25年度までに109万人

一般社団法人日本建設業連合会(東京・中央)の「建設業の長期ビジョン」によると、2014年度に建設現場で働いていた技能労働者数は約343万人。60歳以上が全体の23.2%を占め、50代の割合も21.2%に達していた。推計では25年度には153万人が60代以上となる。

同連合会は高齢化に伴って離職が進み、25年度までに3分の1にあたる約109万人の大量離職時代を迎えると予測。受注に応えるためには同年度までに、90万人の新規就労が必要になるという。ただ、厚生労働省によると、18年6月の「建設・採掘の職業」分野の有効求人倍率は4.50で、全ての職業の1.37に比べ3倍以上。少子化も進むなかで、人材確保はすでに難しい課題になっている。

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