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勝利への必要条件 積極走塁のリスクとリターン
野球データアナリスト 岡田友輔

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2018/8/19 6:30
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今回は走塁を取り上げたい。緻密な日本の野球において「機動力」は非常に重視されている。盗塁はもちろん、貪欲に先の塁を狙う姿勢はゲームに緊張感とスピード感をもたらし、チームの士気を高める。プロ、アマ問わず「機動力野球」をモットーとするチームは少なくない。では実際、走塁の優劣は得点力にどれほど影響するのか。(記録は16日終了時点)

まずは盗塁をみてみよう。これまで何度か出てきた「得点期待値」という考え方を思い出してほしい。ある状況から、そのイニングの終わりまでに平均で何点入るかを統計的に示したものだ。この数値をどれだけ上げられるかが盗塁の価値を示していると考えられる。

2014~16年のプロ野球では無死一塁での得点期待値が0.793だった。ここから走者が盗塁を決め、無死二塁になると期待値は1.057になる。上昇した0.264点分がこの盗塁の価値ということになる。同じ二盗でも1死では0.180、2死だと0.103とアウトカウントが増えるごとに価値は減る。無死二塁からの三盗では得点期待値が1.057から1.279に上がり、貢献度は0.222となる。

しかし、盗塁にはリスクがつきものだ。アウトになった場合のダメージにも目を向けなければならない。無死一塁からの二盗に失敗したとする。1死走者なしになると得点期待値は0.237に下がるから、0.793からのマイナス0.556点分が失敗の代償ということになる。1死からの失敗ならマイナス0.391、2死では攻撃終了となるから得点期待値の0.203がそのまま損失だ。

盗塁、成功率7割でトントン

ここで強調したいのは、成功によるプラスと失敗によるマイナスの不均衡である。たとえば無死一塁からの二盗では、成功しても得点期待値は0.264点しか上がらないのに対し、失敗した場合はマイナス0.556とダメージは倍以上になる。つまり3回走って2度成功しても、得点への貢献では割に合わない。この不均衡は全ての盗塁に当てはまる。盗塁は得られるリターンに対し、リスクが非常に高い作戦なのだ。成功率7割でようやくプラスマイナスゼロになる。

なぜこうなるかというと、野球は27個のアウトを使ってできるだけ多くの得点を挙げるゲームだからだ。時間制限はないのだから、アウトにさえならなければ、いくらでも点が入る。アウト1つの価値は、1つの進塁よりはるかに大きい。米大リーグではこうした認識が浸透し、いちかばちかの盗塁は避ける傾向が強まっている。日本で多用される送りバントや進塁打が限られた場面でしか使われないのも、アウトと進塁の価値を秤(はかり)にかけているからだ。

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