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勝利への必要条件 積極走塁のリスクとリターン
野球データアナリスト 岡田友輔

(3/3ページ)
2018/8/19 6:30
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17年シーズン、最も高いUBRを記録したのは丸佳浩(広島)と源田壮亮(西武)だった。いずれも12球団平均に対して6.7点のプラスを生み出した。3~4点のプラスなら一流と評価できるUBRでこの数字は傑出している。一方、ワーストはセ・リーグ首位打者の宮崎敏郎(DeNA)でマイナス7.2。「ハマのプーさん」の愛称を持つ宮崎のこの数字は仕方ないかもしれないが、見逃せないのは「快足の落とし穴」だ。23盗塁を記録した京田陽太(中日)をはじめ、桑原将志(DeNA)、島内宏明(楽天)といった俊足の選手たちはwSB、UBRともマイナスを記録している。彼らは足に自信があるために無理をして先の塁を狙い、高い代償を払っている。「積極的な走塁」といえば聞こえはいいが、アウトになっては元も子もない。

走塁の神髄は「状況判断」にあり

さて、こうした走塁の巧拙は攻撃全体のなかでどれほどの重みをもつのだろうか。大まかな結論からいえば「1割程度」というのがその答えとなる。打って走れる選手をみればわかりやすい。15年の山田哲は打率3割2分9厘、38本塁打、34盗塁で「トリプル3」を達成し、wSB4.2、UBR7.7と走塁の指標でも球界トップクラスの貢献をした。しかし、打撃における得点の上積みは平均より69.6ものプラス。打力と走力を比べれば、打力の寄与ははるかに大きい。

西武・源田は昨季、走塁による得点への貢献度でトップタイだった=共同

西武・源田は昨季、走塁による得点への貢献度でトップタイだった=共同

チーム単位でも同じことがいえる。圧倒的な攻撃力で2連覇を果たした昨季の広島はその打棒でリーグ平均を142.4点も上回る得点を挙げた。一方、走塁はwSBが3.1、UBRが16.9。機動力野球の伝統があり、球界トップクラスの走れるチームをもってしても、影響はこれぐらい。以前、4月29日付のコラムでも書いた通り、得点力は出塁能力と長打力で9割決まる。足はあくまで付加価値なのだ。

誤解しないでほしいのは「だから機動力は二の次でいい」とか「アウトの代償がそれほど大きいなら、走らないのが一番」という結論にはならないということだ。走塁による得点の上積みが難しいのは、重要性が低いからではなく、プロの世界ではどこのチームもある程度の走塁を実践しているので、差がつきにくいからである。ゴルフのショートパットを思い浮かべてほしい。プロは誰でも1メートルのパットを入れられるから、ショートパットがいくら得意でもそれだけで勝てるわけではない。だからといって1メートルを外していては戦えない。

付け加えると、盗塁の価値は場面によっても変わる。1点を争う終盤、打者に長打が期待できない状況での二盗には、大差がついた場面や試合の序盤に比べてはるかに大きな価値がある。つまり、高いリスクを負うべきときと場合がある。走塁の神髄は、状況ごとのリスクとリターンを考慮したうえで、いくべきところと自重すべきところを正確に見極め、リターンを最大化することにある。

12球団でトップとワーストのチームを比べると、走塁の巧拙でシーズン40得点前後の差がつく。ソツのない走塁は勝利への「十分条件」にはならないが「必要条件」ではある。それだけでは勝てないものの、勝つには欠かせない大前提と理解してほしい。

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