2018年11月19日(月)

金属が半導体に!? 京都大、物理学の常識覆す発見

科学&新技術
BP速報
2018/8/16 18:00
保存
共有
印刷
その他

日経クロステック

京都大学は、三重大学と共同で、白金を極めて薄い膜にしたとき、シリコンなどの半導体で実現されるトランジスタ特性(材料の抵抗を外部電圧で制御する特性)が現れることを発見したと発表した。さらに、白金がスピンを電流に変換する「スピン軌道相互作用」と呼ぶ機能を大幅に変調・制御できることも示した。これらの発見は、「金属材料を使ってトランジスタを作ることはできない」という従来の理解と、「スピン軌道相互作用は材料固有である」という固体物理学における理解を共に覆すものだとする。

今回の研究で用いた素子の構造図と実験の概念図(出所:京都大学)

今回の研究で用いた素子の構造図と実験の概念図(出所:京都大学)

今回の研究では、厚さ2ナノメートル(nm)の白金超薄膜を磁性絶縁体であるイットリウム鉄ガーネット(YIG)上に作製した。この白金超薄膜にイオン液体を載せ、強い電界(ゲート電圧)をかけたところ、白金超薄膜の抵抗が最大50%程度減ることを確認した。厚さ10nm以上の白金に同様の手法を用いても抵抗の変化は観測されないことから、今回の発見は白金を超薄膜状態にすることがポイントであるとする。

実験で抵抗を変化させられたことから、白金の持つスピン流を電流に変換する機能(逆スピンホール効果)をつかさどるスピン軌道相互作用も制御できるのではないかと考え、基板であるYIGからスピン流を白金超薄膜に注入した。その結果、スピン流を電流に変換する機能は最大280%変調できることが分かったという。このスピン流を変換する機能も、白金の厚さが10nm程度になると消失する。

よって、いずれの性質も超薄膜ならではのものであり、金属材料を非常に薄くしていくと中に存在する電子の総数が減少することがこれらの効果をもたらしていると研究チームは結論づけた。今回の発見は、「まるで天から降ってきたように湧いたアイデアだった」と、研究グループの白石誠司氏(京都大学工学研究科教授)はコメントしている。

まだ既存の半導体のトランジスタ特性に比べると性能は低く、すぐに半導体を置き換えるものではないが、スピントロニクス分野でのスピン軌道相互作用を用いたスピン流の電流への変換については、磁化反転メモリー素子などへの応用が視野に入っているという。研究グループでは、今回の研究で見いだしたスピン軌道相互作用の制御により、新しいタイプのメモリーやスピン素子の開発が可能になると期待を寄せている。

(ライター 森元美稀)

[日経 xTECH 2018年8月10日掲載]

今なら有料会員限定記事もすべて無料で読み放題

保存
共有
印刷
その他

日経BPの関連記事

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報