小学生が救う命 「ジュニア救命士」講習広がる

2018/8/16 7:48 (2018/8/16 7:49更新)
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目の前で倒れた人に対し、その場に居合わせた人が救急隊や医師に引き継ぐまでの間に行う応急処置はBLS(一次救命処置)と呼ばれる。すぐにBLSを行うかどうかが生存率に大きく影響するため、小学生にもBLSの講習を通じ命の大切さを学んでもらう活動が各地で広がっている。関係者は「小さな勇気が命を救うことを知ってほしい」と話す。

救命講習で心臓マッサージを訓練する児童ら(水戸市の吉沢小)

水戸市は2016年6月から「ジュニア救命士制度」を始めた。年1回、市消防本部の担当者が市立小学校を回り、6年生の授業で救命講習を行っている。これまで延べ約4千人の児童が受講し、市オリジナルの認定証を受け取った。

「それでは胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めてください」。6月下旬に水戸市立吉沢小学校で行われた救命講習。市消防本部の担当者が声をかけると、小学6年生約90人が真剣な表情で人の胸に見立てたクッションを押した。

児童らは練習キットを使って胸骨圧迫の方法や自動体外式除細動器(AED)の操作方法を学んだ。加瀬葵さん(11)は「ずっと胸骨圧迫をし続けるのは大変だけど、近くに倒れた人がいたら助けられそう」と話した。

市消防本部救急課の石田宏一課長は「市内の全小学校でジュニア救命士講習を実施している自治体は少なく、この活動が全国に広がってほしい」と期待する。

さいたま市も17年度から市消防局と連携し、小学5年生の授業に45分間の「救命入門コース」を取り入れている。

同市では11年9月、小学6年生の桐田明日香さん(当時11)が駅伝の練習中に校庭で倒れ、亡くなった。教員らが保健室に運び込んだが、胸骨圧迫は行われず、室内にあったAEDも使われなかった。約11分後に救急隊が到着した時には心肺が停止しており、翌日死亡が確認された。

この事故を教訓に、市教委は明日香さんの名前を冠した「ASUKAモデル」と呼ばれる傷病者発生時の対応テキストを作成し教員らの研修に使用。児童らにもBLSの重要さを学んでもらう講習を行っている。市教委の担当者は「大切な命から生まれたASUKAモデルを活用し、子供たちが安心、安全に過ごせる学校づくりに取り組む」と話す。

日本で心筋梗塞や心筋症などで発作を起こし突然死する人は年間約7万人。1日に約200人が心臓突然死している計算になる。119番通報から救急車到着までの平均時間は8分30秒。救命率は心肺停止から1分ごとに10%ずつ下がるとされる。心停止の現場に居合わせた時、最も救命率を上げるのがAEDを使ったBLSだ。

総務省消防庁の17年版「救急・救助の現況」によると、心肺蘇生をされなかった傷病者の生存率は約9%。胸骨圧迫をすると約16%、AEDを使うと約53%に上昇する。だが16年に一般市民が目撃した心停止の傷病者約2万5千人のうち、AEDが使用されたのは5%以下となっている。

東京慈恵会医大の武田聡主任教授(救急医学)は「心肺停止の現場に居合わせた時、救急車を待っていては遅く、その場に居る人しか命を救えない。誰もが救命処置をできるよう子供への教育も重要になってくる」と指摘している。

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