2018年11月13日(火)

テスラ、非公開化へ交渉 カネ余りで緩む市場規律

2018/8/14 20:30
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米テスラは13日、株式非公開化に向けサウジアラビアの政府系ファンドと接触していると明らかにした。実現すれば金額は720億ドル(約8兆円)規模と世界のMBO(経営陣が参加する企業買収)で史上最大だ。非上場でも容易に資金を調達できるカネ余りの金融環境がテスラを後押しする。ただこうした案件が相次げば、外部の株主が経営を監視する資本市場の規律が緩む恐れがある。

ツイッターでテスラの株式非公開化の方針を表明したマスクCEO=AP

ツイッターでテスラの株式非公開化の方針を表明したマスクCEO=AP

テスラの株式を1株当たり420ドルで買い付け非公開化する計画は7日にイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がツイッターで公表した。

さらに13日には自社ブログで、2年前にサウジのファンドから非公開化に向けた資金提供の打診があったと説明。同ファンドは最近、市場を通じてテスラ株の約5%を取得し、交渉の前進を求めてきたという。またツイッターでも「財務アドバイザーとして(米ファンドの)シルバーレイクやゴールドマン・サックスと働けることに興奮している」と明かした。

企業が株を非公開化するメリットは不特定多数の株主を排し、株価の変動に邪魔されず経営に専念できる点だ。「上場していると経営をよく理解していない株主も増え、四半期ごとの短期的な利益を求められる」。すかいらーくなどのMBOを手掛けた米ベインキャピタルの杉本勇次日本代表は指摘する。長期的な視点で経営改善に取り組みたい企業にとってMBOは有効な選択肢だ。

テスラ株にはヘッジファンドからの空売りが相次いでいた。背景にあるのは厳しい業績だ。2018年4~6月期は新型車の量産が重荷になり四半期最大の7億ドル超の最終赤字を計上。6月末の現預金は約22億ドルと、3カ月で約4億ドル減った。

非公開化は通常、買収ファンドなどが資金の出し手になり、経営陣と協力して自社株にTOB(株式公開買い付け)を実施し、一般株主から株を買い取る。テスラの場合はサウジのファンドとマスク氏が主導したスキームが見込まれるが、マスク氏は長期投資を志向する株主の出資は維持したい考えで「通常とは異なる」とも説明する。

今回のテスラの非公開化が実現すれば負債を含め買収金額は720億ドルに達し、07年の米電力大手TXUの買収(443億ドル)を抜いてファンドによる企業買収で過去最大になる。

株式非公開化を後押しするのはカネ余りだ。世界的な金利低下で運用難に苦しむ年金など機関投資家が、少しでも高い利回りを求め買収ファンドに資金を投入。企業は非上場でも資金を調達しやすくなり、企業価値が10億ドルを超える「ユニコーン」の台頭を支える。

米国では株式非公開化の増加で上場企業は減る一方だ。ニューヨーク証券取引所とナスダックに上場する企業数は過去20年で3割も減少した。有望企業のつなぎ留めは世界の取引所の共通課題で、香港取引所などのようにIPO(新規株式公開)時に経営陣が他の株主より多い議決権を持つ特殊な株(種類株)の発行を許す例も増えている。

だがこうした基準の緩和が相次げば、株主が企業の経営を監視する資本市場の機能も弱る。マスク氏は既存株主の3分の2は出資を維持するとみて、最低限の資金で非公開化する楽観的なシナリオを描く。テスラの動きは、企業と資本市場の健全な緊張関係が崩れつつある変化を象徴する。(証券部次長 川崎健、白石武志、宮本岳則)

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