2018年11月19日(月)

「反移民」極左と極右が連携(The Economist)

The Economist
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2018/8/15 2:00
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独ベルリンに構える事務所で本誌の取材に応じたザーラ・ワーゲンクネヒト氏は、落ち着かない様子で語る。「我々は、ドイツに移住さえすれば誰でも社会福祉を受ける権利を要求できると考えるのか、それとも労働力の移動のほうがより大きな問題であると認識するのか」。社会主義政党「左派党」の顔として共同議員団長も務める彼女は、同党の今後の方向性について憂慮する。

「流行に敏感な都市部の有権者に注力し、アイデンティティーや生き方に関する議論に徹すれば、社会で最も貧しい人々をないがしろにしてしまう。彼らは、もはや自分たちの声はきちんと代弁されていないと思っている」。こうした懸念から彼女が8月4日に始動させたのが、「立ち上がれ(アウフシュテーエン)」という新たな無党派の運動で、政治に興味をなくした層に働きかける。この動きは、ドイツのみならず欧州全体の政治において、重大な再編が起きていることの予兆かもしれない。

ドイツ左派党のワーゲンクネヒト氏は難民の受け入れ人数に制限を課すことを訴えてきた=Ap

ドイツ左派党のワーゲンクネヒト氏は難民の受け入れ人数に制限を課すことを訴えてきた=Ap

左派党は2005年、ドイツ社会民主党(SPD)を離党した左派が、旧東独の共産主義政党の後継政党と合流したことで生まれた。常に地方の社会主義者と都会の左派リバタリアンという不安定な組み合わせを支持層としてきた。昨年の連邦議会選挙では、旧共産圏である東部在住の高齢層を中心とする約42万人の票を、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に奪われている。その代わりに、主に西部の都市や大学都市で、SPDから70万人、緑の党から33万人の票を奪って相殺した。

そして今、1つの選択を迫られている。カトヤ・キッピング共同党首が望むように、新たに緑の党に代わる左派政党としての強みを確固たるものにするか、それともAfDの左派版として従来の支持層である労働者階級を取り返すことを優先するか、どちらかの道を選ばなくてはならないのだ。

ワーゲンクネヒト氏はここ数年、後者の戦略を追求することでひんしゅくを買ってきた。難民の受け入れ人数に制限を課すことを訴えたり、16年にベルリンで発生したテロ事件はメルケル首相の国境開放政策に責任があると主張したりした。同氏は欧州連合(EU)懐疑派であり、北大西洋条約機構(NATO)に批判的で、おおむね親ロ路線を取っている。

いずれも、AfDの主張と一致する。同党のアレクサンダー・ガウラント党首は彼女を称賛し、より緊密に協力したいと表明している。ワーゲンクネヒト氏はこの申し出を拒否しているが(「問題外だ」ときっぱり宣言した)、AfDと比較対象になること自体で党内の一部から怒りの声を招いている。

彼女は16年の党大会で、その「褐色(ナチスの突撃隊が『褐色シャツ隊』と呼ばれていたことから極右を意味する)」の政治姿勢への抗議として、難民支援の活動家からチョコレートケーキを投げつけられた。また、6月9日に開催された今年の党大会では、左派党の代議員たちが国境開放を呼びかける動議を可決し、ワーゲンクネヒト氏は敗北を喫したと見なされた。

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