2019年8月19日(月)

米、中国の投資締め出し 強まるハイテク覇権争い

2018/8/14 17:00
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【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は13日、外資の対米投資を厳しく審査する新法に署名した。ハイテク分野で覇権争いを繰り広げる中国企業の技術獲得を一段と制限する。人工知能(AI)など米企業の先端技術を守るのが目的で、外資の少額出資なども新たに米当局が厳格審査する。日本企業も対象に含まれ、対米投資は時間とコストがこれまで以上にかさむリスクがある。

トランプ氏が署名したのは、対米外国投資委員会(CFIUS)による企業審査を厳格化する「外国投資リスク審査近代化法」。CFIUSは財務省や国防総省などが管轄する独立組織で、外資の対米投資に安全保障上のリスクがあると判断すれば、大統領に投資中止を勧告する。直近では中国の電子商取引最大手、アリババ集団系の金融会社がCFIUSの承認を得られず、1月に米送金サービス大手の買収を断念した事例がある。

CFIUSの主な審査対象は外国企業による米企業へのM&A(合併・買収)だったが、新法では少額出資なども対象に加えて対米投資の制限を強める。安全保障上のリスクがあると判断すれば、これまで対象と明示してこなかったインフラや不動産分野への投資も差し止めるとした。

制度の詳細は財務省が今後詰めるが、先端技術の海外流出を防ぐため、外国人が機密情報に触れるのを細かく制限する条項案もある。中国当局は政府系基金を使ってシリコンバレーのハイテク新興企業に相次いで投資しており、新法では投資ファンドの対米投資も厳格審査する。

CFIUSの審査対象は外資全般だが、議論を主導した米議会が念頭に置くのは中国だ。トランプ氏が仕掛けた対中関税に続く米中摩擦の第2弾ともいえるが、今回は与野党が圧倒的多数で新法を可決するなど議員の幅広い支持を得ている。関税を振りかざして中国側に譲歩を求めるトランプ氏の近視眼的な「ディール(取引)」と異なり、ハイテク摩擦の長期化を招くリスクがある。

実際、議会諮問機関の米中経済安全保障委員会(USCC)は2016年時点から「中国国有企業の米企業買収を阻止するため、CFIUSの権限を強めるべきだ」と提言してきた。中国マネーを失えば米産業界の資金調達に支障が出かねないが、「ハイテク分野や軍事分野で米国の優位を失うリスクのほうが大きい」(ハイテク分野の米ロビイスト)との危機感がある。

議会やホワイトハウスに触発されたCFIUSは、すでに中国企業の対米投資の審査を独自に強化している。調査会社ロジウム・グループによると、18年1~6月期の中国勢の対米直接投資額はわずか20億ドルと前年同期比9割も減った。

10日には、トランプ大統領の私邸があるニューヨークのトランプタワー近くの不動産を所有する中国企業に対し、CFIUSが同物件を売却するよう命じたとも報じられた。中国勢は既に米国への直接投資を事実上、締め出された状態にある。

日本勢にはこうしたCFIUSの"裁量行政"に不安がある。新法はこれまで任意だったCFIUSの事前審査を一部で義務付ける項目があり、日本企業の対米投資にも影響が避けられない。ハイテク分野を巡るCFIUSの事前審査が煩雑になり、対米投資にこれまで以上に時間やコストがかかる可能性がある。

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